次に、和平合意の条件として、第1に、クリミア半島、ドネツィク、ルハンシク、ヘルソン、ザポリージャの各州がロシア連邦の一部であることをウクライナが国際的に拘束力のある形で承認することを要求している。ウクライナ指導部は、違法な併合を常に断固として拒否してきた。
12項目のうち第2番では、ロシアはウクライナに対し、中立性と非同盟のコミットメント、すなわちNATO加盟の放棄を要求している。その他の項目は、ウクライナの非核兵器状態の確認とウクライナ兵の人数制限に関するものだ。モスクワはまた、民族主義的な軍事組織と国家衛兵の解散も要求している。さらに、ウクライナには賠償を受ける権利の放棄を要求している。
また、紛争の永続的な解決のため、モスクワはロシア人およびロシア語話者の少数民族の権利の保護と、ロシア語の公用語としての承認を要求している。モスクワの観点から、キーウは全ての制裁の解除と外交関係の再開にコミットすべきである。この文書には、ウクライナを経由してヨーロッパへのガス輸送の再開も含まれている。意向表明では、和平合意は署名後、法的拘束力のある国連決議によって承認されるべきであるとされている。
以上、DPA通信が発信したロシアの「覚書」の内容だ。クレムリンがウクライナへの全要求を明記したパラード、といった感じだ。プーチン大統領自身ですら、上記の内容が全て受理されるとは考えていないだろう。プーチン氏が自身のナラティブに基づいて全ての要求を実現しようとするならば、ウクライナの完全占領しかなくなる。
プーチン氏にはトランプ米大統領から利害が対立する相手とのディ―ルのやり方を学んでほしい。交渉の初めには最大の要求は当然かもしれないが、最終的には妥協と譲歩が不可欠となる。ロシア・ウクライナ間の第3回の直接協議ではその妥協と譲歩をまとめた「覚書」を提示してほしいものだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年6月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。