長妻氏の計算だと厚生年金≒国民年金だから、今回の法案は厚生年金の2階の年金を1階に移動するだけで、損する人はほとんどいない(たかまつなな氏も同じ計算違いをしていた)。しかし厚生年金積立金は、基礎年金の3割を占める国民年金加入者に流用されるのだ。国民年金加入者は、保険料なしで年金が3割増える。
この基本的な計算を間違えているので、ここから先の長妻氏の議論はすべて間違いだ。特にひどいのは、厚生年金受給額が減るのは63歳以上だけで、それ以下の世代はみんな得するという図3である。
図3 長妻氏の間違った図
これは社会保障特別会計だけの数字で、一般会計から投入される国庫負担70兆円が抜けている。これを補うと、図4のようになる。
図4 正しい底上げのイメージ(日本経済新聞)
つまり今回の法案は「現役世代厚生年金カット防止」どころか、国民年金受給者は全員が大幅にプラスだが、厚生年金受給者は63歳以上はマイナスで、将来の増税はすべて現役世代が負担する。国民年金受給者は得するが、厚生年金受給者は大きく損するのだ。
長妻氏は「ミスター年金」と呼ばれているので、本人も周囲もこの致命的な間違いに気づかなかったのだろう。立民の議員もこの間違った図をSNSで拡散している。「99.9%の受給額が増える」という厚労省の嘘を鵜呑みにした長妻氏の責任は重い。
今回の年金法改正案は、現役世代のサラリーマンが大きく損する現役世代手取りカット法案である。この計算違いにもとづく年金法改正案は廃案とし、参院選後の臨時国会であらためて時間をかけて審議すべきだ。