なお、教皇はメッセージの中で、アナバプテスト運動の精神的な関心について言及し、「彼らの元々の関心はキリスト教の信仰を刷新したいという願望に特徴づけられた」と強調し、「戦争と分裂が蔓延する世界において、エキュメニズムには特別な責任がある。キリスト教徒の団結が深まるほど、平和の君であるキリストへの彼らの証言は、愛に満ちた出会いの文明を築く上で、より効果的となるだろう」と述べている。

最後に、レオ14世はアナバプテスト派への精神的な親近感を表明し、「私たちの兄弟愛が深まり、成長することを心からお祈りいたします」と述べている。

バチカンニュース(2025年5月29日)は「アナバプテスト運動は、福音に完全に志向した生き方をしようとする試みとして始まり、暴力の使用の放棄と、多くの人にとって財産の共有が含まれていた。教会への入会のためには、洗礼を受ける人の意識的な信仰と意志の行為が必要であると理解していた。そのため、幼児洗礼を拒否した。アナバプテスト派とその後継者たちの目には、信仰による洗礼だけが有効だ。今日、成人の洗礼はキリスト教において再び一般的な慣習となっている」と報じ、アナバプテスト運動の名誉回復をしている。

このコラム欄で「『洗礼』を受ける成人が増えてきた」(2020年8月25日)を書いたが、数はまだ少ないが、成人洗礼者が増えてきている。成人洗礼の場合、1年間の準備期間が必要だ。それから最初の聖体拝領を受けることになる。

ちなみに、日本の代表的カトリック作家・遠藤周作は「体に合わない服を勝手に着せられたような思いが付きまとった」と、自身の幼児洗礼の体験を表現している。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年5月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。