スペインは征服後、メキシコの社会・教育制度の発展にも貢献した。たとえば、メキシコ最初の大学は1553年に創設されており、これはアメリカ最古のハーバード大学(1636年創設)よりも早い。
現代においてもスペインとメキシコの関係は緊密で、スペイン企業約7,000社がメキシコに進出している。ラテンアメリカにおけるスペインの最大の投資先はメキシコであり、スペインの大手銀行BBVAの利益の半分はメキシコ市場から得られている。
こうした友好関係の中で、あらためて謝罪を求めるというロペス・オブラドール前大統領の姿勢は軽率であり、国内でも批判が巻き起こった。その主張を支えたのが他ならぬベアトゥリス夫人であり、今回の国籍申請と合わせて、ますます道義性が問われる事態となっている。
彼女の祖父母がスペイン人であったことが、スペイン国籍取得の根拠とされている。単なる滞在許可(査証)ではなく、国籍取得を選んだ理由は、スペイン人としてEU圏内を自由に移動し、研究テーマを深めるためだという。これまで批判していた国の国籍を、利便性のために取得しようとする姿勢には、自己都合と映る面が否めない。
国王招待をめぐる外交失態
この一連の動きは、現大統領クラウディア・シェインバウム氏にも影響を及ぼした。彼女はロペス・オブラドール氏の最も信頼される後継者とされていたが、大統領就任式にフェリペ6世を招待しなかった。この判断に対し、スペイン政府は強く反発し、閣僚の誰一人として就任式に出席しなかった。