クワガタと聞いて思い浮かべるのは森の中の昆虫でしょう。
しかし実は、海の中にもクワガタそっくりの生き物がいるのです。
しかもその生物の名前は、見た目そのまま「ウミクワガタ」と呼ばれています。
そして最近、京都大学、北海道大学、 山陰海岸ジオパーク海と大地の自然館(鳥取)の共同研究により、沖縄から鳥取に至る西日本の海域で新種5種、日本初記録種1種、そして再発見1種のウミクワガタが見つかったのです。
さて、どんな見た目をしているのでしょうか?
研究の詳細は2025年4月の科学雑誌『Bulletin of Marine Science』に掲載されています。
目次
- ウミクワガタって、どんな生き物?
- 新種のウミクワガタを発見!日本初や再発見された種も
ウミクワガタって、どんな生き物?
ウミクワガタとは、甲殻類の中でも等脚目(いわゆるワラジムシやダンゴムシの仲間)に属する小さな生物です。
その体長は森にいるクワガタムシとは違って5ミリにも満たないものが多く、一見すると何かの幼虫のようにも見える姿をしています。
この生き物の最大の特徴は、ライフステージによって生活様式がまるで異なることです。
幼生期は魚の体表に寄生して体液を吸い、例えるなら「海の蚊」のような存在として成長します。
けれども、成体になるとまったく別の姿に変わります。
オスの成体は、まるでクワガタムシのように立派な大顎を備えますが、戦うためではなく繁殖のための装備です。
反対にメスの成体には大顎はなく、丸みを帯びたふくらんだ体で卵を抱き続け、孵化を待ちます。
そして驚くべきことに、成体はもはや何も食べず、ただ繁殖行動に特化して生きているのです。

このような特異な生態のため、ウミクワガタは生態学的に非常に興味深い存在とされながらも、その小ささと隠れた生活のために研究が進みにくい種でもありました。