しかも合計250万ドル(約3億5600万円)もの報酬をDoorDashから不正に獲得していたといいます。

まるで都市伝説のような話ですが、これはれっきとした事実です。

では、いったい彼はどうやってこの不正を成し遂げたのでしょうか?

配達していないのに報酬が? 3億5600万円を騙し取った驚きの手法とは?

DoorDashのシステムでは、配達員が注文を受け、配達を完了すれば報酬が発生します。

その構造を利用したのが、犯人の手口でした。

彼はまず、偽の顧客アカウントを作成。架空の高額な注文を行いました。

そして、DoorDash従業員の承認情報を使用し、自分自身が作成した配達員のアカウントに手動でその高額注文を割り当てたのです。

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犯人たちは、架空の注文と配達を生み出し、配達料だけを不正に得ていた / Credit:Canva

その後、彼らはその注文を「配達完了」と報告。配達料を受け取っていました。

もちろん、実際に料理を注文した顧客も、届け先も存在しません。

すべてが架空の構造の中で、システム上”注文”と”配達完了”が成立していたのです。

そして、このプロセスを繰り返すことで、犯人は架空の配達履歴を残し、それに応じた報酬を着実に獲得していきました。

このようなシステム上の処理が何度も繰り返された結果、犯人たちは最終的に約3億5600万円以上にもなる巨額の配達料を受け取ることに成功しました。

ところが、こうした犯罪を隠し通すことは難しかったようです。

FBIの操作の結果、犯人は、2024年8月に通信詐欺罪(wire fraud)で起訴され、2025年5月13日にはその罪を認めました。

彼らには、最長20年の禁錮刑および最大25万ドル(3560万円)の罰金が課される可能性があります。

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今回の「フードデリバリー三億円事件」は、今後登場する新しいビジネスモデルに入り込む「悪意」の存在を気づかせてくれる / Credit:Canva