DV・自殺・暴力団・宗教・統合失調症…事故物件よりも鬱になる「暗黒物件」の闇を“不動産執行人”ニポポが語り尽くす…!

 最大限の努力で物件に関する不明点は潰す。

 これが差し押さえ・不動産執行の現場では徹底されており、調査も公的な「執行」であるため、取引上の不明点や、不動産取扱に関する情報不備などはほぼ完璧に潰される。

 そのためイメージの悪い「競売」ではあるが、民間不動産取引でありがちな後から「話が違う」「こんなはずではなかった」といったすれ違いは圧倒的に少なく、実は安全性も高い。

 とはいえ、これらに当てはめて考えにくい事案もいくつか存在する――。

 この日の物件は古い農家住宅。

 最寄り駅は遥か遠くに存在し、相当前に親の他界で相続されたという今回の当該物件は奇妙な形で土地を切り分けられており、兄が所有する母屋の玄関と縁側だけが何故か弟の敷地内へと越境していた。

 越境と言っても明確な境界線が設けられているわけではなく図面上のもの。立派な門をくぐると広い敷地内には右手に兄の母屋、左手に弟の分家、その他にも納屋や物置に蔵、厠などが点在しているという状況だった。

 債務者である兄とは連絡がつかなかったため、弟に立会を求めてはみたのだが、不仲を理由に「行きたくない」「やっぱり行ってやってもいい」「やっぱり行かない」と態度を二転三転。

 最終的に当日朝には「行くわけ無いだろ!」と声を荒げていた。

 立ち会いがないということで鍵師さん同行の執行となったわけだが、門をくぐるなり鍵師さんはいち早く状況を把握。

「これ、鍵開け必要ないですよ。たぶん開いてるんで」

 確かに昔ながらの引き戸玄関の扉には少々傾きが発生しており、鍵がかかる角度になかった。

 ゴミがバリケードのように行く手を阻む玄関をよじ登ると、時が止まったような空間が待っていた。

 土間厨房から奥へと連なる和室、ガチャガチャとチャンネルを回すタイプの家具調テレビ、大型の真空管ラジオ、立派なケースに収められた日本人形。

押入れの中に“得体の知れない何か”がいる… 不動産執行人が暴露した、実在する「絶対に近づけない押入れ」の恐怖体験
(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)、『TOCANA』より 引用)

壁にかけられたカレンダーには平成3年とある。

 点在する家具や家電には今やマニアが高いお金を出しそうなものもいくつかあったが、我々は「動産執行」ではなく、「不動産執行」で訪ねているためこれらに目を向けることもなければ報告することもない。

 再び不動産に焦点を合わせると、奇妙な点があった。

 長期間空き家という状況を考えると、相当きれいに保たれている室内なのだが、押入れにだけ、人が滞在していた気配があり散らかっているのだ。

 どこかの猫型ロボットのように寝床にしていただけではなく、照明の設置や飲食の形跡、本や生活用品が点在し、そこで暮らしていた形跡がある。

 これが何故か一部屋だけでなく次の部屋の押入れにも同じような形跡があり、缶コーヒーの銘柄や生活用品の種類からも一人の人間が押入れ住居を転々としていたとは考えにくい状況にあった。

「これ、住んでいたんでしょうかねぇ?」

 執行官の言及を遮るように勢いよく「ドンッ」と壁が叩かれた。

 音の発生源に視線を向けると、債務者の弟が窓の外からジッとこちらを覗いている。

 以降この弟は我々の調査の様子を窓の外から眺めては、押入れに差し掛かるたびに「ドンッ」と壁を叩き続けた。

押入れの中に“得体の知れない何か”がいる… 不動産執行人が暴露した、実在する「絶対に近づけない押入れ」の恐怖体験
(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI),『TOCANA』より 引用)

気味の悪さはあったが、特段攻撃性があるわけでもないため、無視をしながら執行を続けていたのだが、やはり各部屋の押入れには何人かが住んでいた、あるいは軟禁されていた形跡がある。

 そして、一番奥の部屋に差し掛かる頃には……。

「ドドドドドドドドンッ!」

 威嚇の音がより激しいものに変わる。

 暗い室内で照明を点けてみると、この部屋だけ押入れが真新しい板で壁一面に打ち付けられていた――。

 執行ではよっぽどのことが無い限り破壊行為が出来ないため、執行官が債務者の弟に話を聞こうとするも……既に彼は姿を消している。

 これまで人の滞在が見えていた押入れだけに、一応板越にノックをしてみたが……もちろん中からの応答は無かった。

押入れの中に“得体の知れない何か”がいる… 不動産執行人が暴露した、実在する「絶対に近づけない押入れ」の恐怖体験
(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI),『TOCANA』より 引用)

最終的にこの物件の打ち付けられた押入れは中を確認することが出来ず、「不明」「調査不能」のまま「デッドスペース」とだけ記され、競売へと回されることになった――。

 このような押入れの違和感も、簡単なリフォームや清掃で痕跡を感じさせることなく次のオーナーへと渡ることになる。

 もちろん「デッドスペース」から遺体が発見されたとしても、事件性なしと判断されれば表面化することは難しい状況にあるだろう。

「押入れ」

 みなさんが住む部屋の押入れは、本当に以前から押入れとして利用されていたのだろうか。そこにはかつて何が収納されていたのだろうか、ひょっとすると「誰かが住んでいた」ということはないだろうか。

文=ニポポ

提供元・TOCANA

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