SFドラマ『ブラック・ミラー』の一場面が現実になるかもしれない。OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏が、iPhoneのデザインを手がけた伝説的デザイナー、ジョニー・アイブ氏とタッグを組み、ユーザーの周囲の状況や生活のすべてを「完全に把握できる」ウェアラブルAIデバイスの開発を進めているというのだ。その数、なんと1億台。この野心的な計画が、今、シリコンバレーに新たな波紋を広げている。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、アルトマン氏はこの秘密の「AIコンパニオン」ガジェットの生産を指示したという。このニュースはOpenAIがアイブ氏のデザインスタジオ「LoveFrom」と長年「静かに」協力してきた末に、アイブ氏のAI企業「io」を買収した直後にもたらされた。買収額は明らかにされていないが、ブルームバーグに対し、アルトマン氏とアイブ氏はこの取引の評価額が約65億ドル(約1兆円)に上ると語っている。流出した社内通話の録音では、アルトマン氏が従業員に対し、io社の買収は「会社としてこれまでで最大のことを成し遂げるチャンス」だと語っていたというから、その本気度がうかがえる。

スクリーンタイム削減を目指す「名もなきデバイス」への期待と懸念

 現在開発中のこのデバイスは、まだ名前も明かされていないが、ポケットやデスクに置けるほどコンパクトで、スクリーンタイムを減らすことを目的としているという。Apple Watchとは異なり、電話機能は搭載されない見込みだ。アルトマン氏とアイブ氏のコラボレーションは、まさにシリコンバレーの夢物語のようだが、懐疑的な見方も根強い。以前、Humane AI Pinというウェアラブルデバイスが700ドル(約10万円)で発売されたものの、その大きさと性能の悪さからユーザーの返品が相次ぎ、失敗に終わった経緯があるからだ。「常時監視型」のAIデバイスを人々が本当に受け入れるのか、多くの人が疑問視している。

 Appleのアナリスト、ミンチー・クオ氏は、このOpenAIとアイブ氏の製品は、Humaneのデバイスより「わずかに大きい」程度(Apple Watchの文字盤程度)ではないかと推測している。このデバイスが音声や映像を記録するのか、そしてそのデータがどこに保存されるのかについては、OpenAIはまだ詳細を明らかにしていない。しかし、そのコンセプトは、人々の人生のあらゆる瞬間を記録するインプラントが登場する『ブラック・ミラー』のエピソード「人生の軌跡のすべて(The Entire History of You)」を不気味なほど彷彿とさせる。

人生“全録画”時代到来か?OpenAI、1億台の「常時監視AI」計画!ブラック・ミラーが現実に…
(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)、『TOCANA』より 引用)