その点において世論はあらゆる理由をつけて戦争を継続するネタニヤフ首相への批判にとどまらず、シオニストという名のユダヤの原理主義が力で跋扈することへの厳しい姿勢とも言えます。
日本ではユダヤ人に対して高いリスペクトと杉原千畝氏の「美談」を含め比較的前向きの意識が強いと思います。更にはユダヤ的発想が金持ちへの玄関的な持ち上げ方をされていることがそのような印象を余計強くさせているのだと思います。一方、ユダヤ人が多いアメリカとカナダでは学生らが声を上げ、絶対人数が少ないユダヤ系の人はそれを刺激しないような状態にあります。
イスラエルが今後、ガザでの完全制圧、周辺国に潜む反イスラエル派への攻撃、そしてイランへの直接攻撃へエスカレートするならば国際社会は反イスラエルから反ユダヤに転じてしまい、その場合、収拾がつかなくなる公算はあるとみています。
基本的には宗教戦争の一環であり、終わりがない話をしています。宗教を原因とする戦争は歴史的に長く続くことも多く、仮にネタニヤフ氏が首相を降りても強硬派はいくらでもいるわけでその点ではプーチン氏のロシアよりもタチが悪いとも言えそうです。
本来であればアメリカがコントロールすべきであり、トランプ氏はネタニヤフ氏の暴走を抑えるべきです。ただし、ネタニヤフ氏も閣内や一部政党の強硬派の声を聞かねばならないという微妙な立場に置かれており、ある意味日本の戦時中の大本営や軍部の会議を見ているような感じすらあります。トランプ氏は戦争嫌いですが、イスラエルには特別の思いがあり、例外的な立場を取り続けています。これは逆にプーチン氏を勇気づけてしまい、アメリカがイスラエルを抑えられないならロシアも戦争を止めないだけだ、というロジックが展開しかねません。
果たしてトランプ氏は立ち上がることができるのでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年5月26日の記事より転載させていただきました。