押し入れの箱の中には、“私への贈り物”が詰まっていた
手紙と一緒に入っていたのは、母が生前よく使っていたアクセサリー。
そして──私が学生時代に「かわいい」と言った、まるで忘れていたはずのシュシュとポーチ。
「これは、いつかあの子が必要になったときに渡そう」
きっと母は、そんな風に思って取っておいてくれたのでしょう。
さらには、母の名前が入った小さな数珠と、お守りのように包まれた一通のメモ。
そこには、ただ一言だけ。
「あなたに、いいことがありますように」
涙が止まりませんでした。
母は、私がこの箱を“必要とする日”を、ずっと前から準備してくれていたんです。
手紙に書かれていたのは、「未来の私」への言葉

震える手で、その手紙を広げました。
そこには、母の丸い、優しい文字が並んでいました。
「この手紙を読んでるあなたは、 きっと何かを手放そうとしているときじゃないかと思います。」
「でもね、手放すことと、忘れることは違うのよ。 大丈夫。あなたはちゃんとやってる。」
「弱くても、泣いても、あなたはちゃんと生きてる。 それだけで、私は十分よ。」
読んだ瞬間、声をあげて泣いてしまいました。
母は、自分がいなくなった“あと”の私のことまで、ちゃんとわかっていたんです。
片づけは「区切り」じゃなく「つながり」だった
私は、片づけるという行為を「終わり」だと思っていました。
思い出をしまいこむことで、母との距離が遠くなる気がしていたからです。
でも、あの手紙が教えてくれました。
“ 思い出す ” ことさえできれば、人はいつでも誰かと「つながり続ける」ことができる。
母が残してくれたのは、モノじゃなくて、
これからを生きるための “ 勇気 ” と “ 言葉 ” だったのかもしれません。
あのタイミングだったから、受け取れた

実は私は、ちょうど今の家を売って、新しい土地に移る決断をしたばかりでした。
子どもたちも成長して、自分の時間を持てるようになったとはいえ、不安は山ほど。
そんな時期に、あの箱を見つけたのです。
あのタイミングだったからこそ、母の言葉は、真っ直ぐに心に届いたんだと思います。
母は、未来の私の姿まで見えていたのでしょうか?
そんなわけない、と思いながらも──私は、確信しています。