JJの発言に関するストッカー首相の反応は伝わっていないが、政府首脳陣は苦悩を隠せられないだろう。ORFのヴァイスマン会長は22日、「JJの発言はあくまでも彼個人の発言であり、ORFとは全く関係がない。ORFにとって、ESCの焦点は音楽と芸術パフォーマンスにある。EBU(欧州放送共同体)は、政治とエンターテインメントを区別する明確なガイドラインを定めている。EBUは参加国または参加除外国を決定する唯一の機関だ」と述べ、、JJ発言で沸き上がった熱気帯びた論議の鎮静化に努めている。

ユーロビジョン・ソング・コンテストで優勝したJJさん JJさんインスタグラムより
なお、ユーロヴィジョンを主催するEBUはロシアに対しては参加を拒否しているが、イスラエル代表の参加は認めている。JJの立場からいえば、ロシアを拒否しながら、どうしてガザで多くのパレスチナ人を殺害しているイスラエルの参加は認めるのか、といったダブルスタンダートへの疑問だ。 オーストリアのメディアによると、「昨年の歌のコンテストでスイス代表として優勝したネモも、イスラエルを除外することを支持する意見を公然と表明した。最近、歌のコンテストの元参加者70人が公開書簡で同様の意見を表明している」という。どうやら、「イスラエル・ボイコット」を叫ぶ歌手たちはJJだけではないようだ。
ただ、忘れてはならない点は、ウクライナに軍事侵攻したロシアとイスラム過激派テロ組織「ハマス」の奇襲テロで1200人以上の国民を殺害されたイスラエル側の報復攻撃を同じ次元で論じるべきではないことだ。実際、オーストリア国民議会元議長ヴォルフガング・ソボトカ氏は「イスラエルをESCから除外し、ロシアと同等に扱うというのは完全に見当違いであり、歴史を無視している」と主張している。
参考までに、ファン・デア・ベレン大統領が23日、日刊紙「クローネン・ツァイトゥング」紙で、「『イスラエル国家に対する揺るぎない姿勢』と『特にガザ問題におけるイスラエルのネタニヤフ首相の現政権』の間は区別されなければならない」と語っている。要するに、「ネタニヤフ政府の行動に対する必要な批判を排除することなく、イスラエル(国家)を支持することが重要だ」というわけだ。