そのため私たちが普段接する氷の多くは全て、この無秩序な分子で覆われていることになります。
研究者たちは、この無秩序な分子の存在によって氷の表面に水のような光沢が与えていると述べています。
ただ発見された無秩序な水分子(黒)は固体の氷になるべき温度で液体の水のように動くという興味深い特質を持つため厳密には単なる「液体の水」ではなく「氷の準液体層」という奇妙な位置づけとなっています。
つまり氷の表面を覆って滑りやすさに貢献していたものは厳密には氷でも水でもないユニークな存在だったのです。
圧力説、摩擦説、ファラデーの予測といった様々な説を経て、ついに氷の表面に存在する「何か」の正体と起源が判明したと言えるでしょう。
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参考文献
Atomic-resolution imaging shows why ice is so slippery
https://phys.org/news/2024-05-atomic-resolution-imaging-ice-slippery.html
元論文
Imaging surface structure and premelting of ice Ih with atomic resolution
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07427-8
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部