株式会社ビズリーチは、社内の人材とポジションをマッチングする「社内版ビズリーチ」をリリースした。転職をサポートするプラットフォーム「ビズリーチ」を運営する同社が、企業の人材流出を防ぐサービスを始めるとして話題を呼んでいる。人材マッチング機能としてはビズリーチと同じだが、特徴は社内の人材を対象とする点だ。生成AIを活用し、ポジションに合う人材を社内から探すという。転職が当たり前になっている昨今、企業にとって人材流出が課題となっている。最適な人材配置を実現し、退職を防ぐ狙いがある。同社広報に取材し、社内版ビズリーチの詳細を聞いた。
大転職時代に突入 同社の主力事業は、転職プラットフォームの「ビズリーチ」と人材活用プラットフォームの「HRMOS」シリーズである。ビズリーチはハイクラス人材を対象とした転職プラットフォームとして知られ、企業だけでなく求職者にも課金する点が特徴だ。一方のHRMOSは採用から入社後の活躍までの人事業務支援と従業員情報の一元化・可視化により、データに基づく人財活用を実現するサービスだ。今回の「社内版ビズリーチ」はHRMOSタレントマネジメントの一機能として昨年8月の一部リリースをしたが、日系大手企業の人事・採用に関わる責任者の方とともに行った検証・開発を経て、タレントマネジメント機能に留まらず、株式会社ビズリーチの新サービスとして、1月に正式リリースした。生成AIを活用し、社内の人材と適切なポジションをマッチングするという。リリースに至った背景について、広報担当者は次のように話す。
「企業の採用計画における中途採用比率が5割に到達し、大転職時代に突入しています。今のポジションやキャリアに満足していない人材にとって、転職しやすい環境です。企業側は人材流出が課題となっており、ミスマッチを防ぎたいというニーズを汲み取って開発に至りました。5年前から構想し、2年半前から開発を始めました」(ビズリーチ広報)
特に入社から5~10年目にあたる30代の人材流出に危機感を持つ企業が多いという。一通り教育し終え、今後の会社への貢献が期待される世代だ。だが、人材市場は超売り手市場であり、社内でキャリアやスキルアップが見込めないと判断した従業員はすぐに辞めてしまう。
ビズリーチで蓄積したノウハウを活用 社内版ビズリーチは、「ビズリーチ」で蓄積した転職市場のデータを学習した生成AIを活用して、社内のポジションと人材の最適な組み合わせを表示するという。具体的にどのようなことができるのか。
「全てのポジションを一元管理し、充足率やアサイン状況を可視化します。そして、特定のポジションに空きができた場合、そのポジションに適する人材を社内から探すことができます。マッチ度は数字で表示されます。また、『データ分析ができ、営業に強い人』、『プログラミングが得意な人』といった自然な言葉と特徴の近さから検索でき、候補人材をピンポイントで探すことも可能です」(同)
通常の転職プラットフォームと同様、人事担当者や幹部はマッチ度の高い候補人材にスカウト活動を行うことができる。また、求人への応募のように、従業員の方が候補ポジションに応募する機能もある。従業員の応募を直属の上司が見られないようにし、人事担当者だけが把握するような設定にもできるという。
異動は幹部や人事担当者の勘や経験、意図に基づいて行われることが多いが、生成AIを活用することで、より最適なマッチングが可能になる。社内で眠っていた人材の発掘もできるようだ。人事担当者の経験は企業によってさまざまであり、年数が長くない場合もある。生成AIを活用する方がミスマッチの可能性は低いだろう。
社員が新たに入力する必要はない 通常の転職活動では求職者が履歴書や職務経歴書を準備する必要がある。社内人材のデータベースを構築する際にも、そうした書類やデータの入力が必要になりそうだが、社内版ビズリーチでは改めて書類を作成したり、社員が入力したりする必要は基本的にはないという。
「社内版ビズリーチでは入社時に提出した職務履歴書や、入社後の異動歴、目標や実績などを参考に、生成AIが社員データのレジュメを作成します。企業がいつも通り使っている書類からデータを得るので、社員や人事担当者が改めて詳細を入力する必要はありません」(同)
昨今のIT化やDX事例を調べると、「新システムの導入で新たな書類作業が増えた」という本末転倒な話をよく耳にする。従来の書類を応用できれば、システム導入の負担も軽減できそうだ。なお、リリースしたばかりなので、導入による数値的な効果は、今後精査していくという。
「企業側にとって離職率低減というメリットがありますが、社員側にも希望のポジションでキャリアアップを図れるというメリットがあります。転職せずに社内で活躍できるポジションを見つけられれば、お互いにとって有益な結果となるでしょう」(同)
1,000人以上の企業が検討 すでにキリンホールディングスや岡三証券グループなど大手各社が導入しているという社内版ビズリーチ。報道によると各部署が行員に異動を打診できる社内制度を26年1月から始める計画だ。導入によって各ポジションの専門性を高める狙いがあり、約2万8000人いる全行員が対象となっている。
「今後も、ビズリーチ及びHRMOSを使って頂いている企業を中心に提案する計画です。業種は問いません。規模でいえば社員数1,000人以上の大企業からの引き合いが多いですが、幅広い企業にご利用頂けます。M&A先などの社員情報の可視化を目的に導入を検討する企業もあります」(同)
売り手市場の昨今、名の知れた大手企業でも人手不足が課題となっている。中途採用はもちろんのこと、退職者にアプローチするアルムナイ採用を行う企業もある。社内版ビズリーチが離職率をどの程度低減でき、社員の満足度向上につながるのか、今後の成果に注目したい。
(文=山口伸/ライター)
提供元・Business Journal
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