するとプロラクチンシグナル伝達を遮断すると女性の痛覚受容体の活性化が抑えられたものの男性には影響はありませんでした。
またオレキシンBシグナル伝達を遮断すると、男性の痛覚受容体の活性化が抑えられましたが、女性には効果がありませんでした。
この結果も、男性と女性は異なる種類の痛覚受容体を持っていることを示しており、女性の痛み治療にはプロクラチン経路の遮断、男性の痛み治療にはオレキシンB経路の遮断が有効であることを示しています。
これまで私たちは、男女の痛みの感受性は脳の働きの違いや、文化的影響により男女で痛みの報告に差があることが原因であり、細胞レベルでは違いがないと考えてきました。
そして治療に使われる各種の鎮痛剤も、そのような前提で使用・開発が行われてきました。
しかし今回の研究によって、痛みの治療には、男性用と女性用に特化した対処法(薬など)を提供した方が有効である可能性が示されました。
研究者たちも「最も基本的な遺伝的差異は、患者が男性か女性かということであり、患者の遺伝子(性別)にあわせた痛みの治療を行うことが重要になる」と述べています。
実際、最新の研究では女性の痛み治療にプロラクチン中和抗体が有効であること示唆されています。
またオレキシンの効果を打ち消すオレキシン拮抗薬が、睡眠障害の治療薬としてFDA(食品医薬品局)に既に承認されています。
こちらは痛み治療とは用途が異なりますが、安全性の確認が行われた上で承認されているため、痛み治療への転用も比較的容易であると考えられます。
もしかしたら未来の薬局では、頭痛薬など基本的な鎮痛剤も男性用と女性用で別れて売られているかもしれませんね。
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参考文献
Study shows first evidence of sex differences in how pain can be produced
https://healthsciences.arizona.edu/news/study-shows-first-evidence-sex-differences-how-pain-can-be-produced