世界経済は今、デジタルテクノロジーの急速な進展により、大いなる転換点を迎えている。ブロックチェーンや分散型台帳技術(DLT)、人工知能(AI)、さらにはステーブルコインといった革新的技術は、既存の金融システムの枠組みを超越し、新たな経済圏を形成しつつある。この潮流は、技術革新を原動力とする50〜60年周期の景気循環、すなわち「コンドラチェフ循環」における第六の波に位置づけられよう。これは、第五波である「デジタル情報革命」を継ぐ「デジタル空間革命」とも称すべき時代の到来である。

特に注目すべきはステーブルコインだ。この新たなデジタル資産は、暗号資産が持つ利便性と、法定通貨の安定性とを兼ね備え、金融システムの構造的課題に対する突破口となる可能性を秘めている。米国は、ドルに連動するステーブルコインの発展を戦略的課題として明確に位置づけている。これは米ドルの基軸通貨としての地位を、アナログな領域にとどまらず、デジタルでも堅持しようとする意思の表れであろう。また、この施策は経済活動の効率化および財政の健全化をも視野に入れている。

また、米国を中心に進展するメディア・IT・金融の融合も看過すべきではない。従来、広告収入を主要な収益源としていたメディア産業は、その限界を迎えつつあり、新たなる収益構造として金融分野への進出を加速させている。例えばイーロン・マスク氏は、Xをスーパーアプリへと進化させることを掲げており、その中核にはAIの融合及び金融サービスの実装が据えられている。ユーザー間の送金、デジタルウォレット、果ては証券取引までを視野に入れた構想は、もはやSNSの枠を超えた経済基盤の構築である。

日本が直面する地域経済の衰退とメディア業界の課題を克服する鍵も、まさにこのメディア、IT、金融の三位一体の融合にある。例えば、ある地方紙がデジタルメディアの力を駆使し、地域特産品の魅力を全国に向けて発信した結果、販路が拡大し、売上が飛躍的に向上した事例がある。これにより、地域の生産者や観光業者の収益が増し、ひいては地域経済そのものが活性化した。地域メディアは、高い情報収集力と発信力を有している。これにデジタル金融の仕組みを融合させれば、消費者はより直接的かつ効率的に、地域の事業者や生産者を支援することが可能となる。すなわち、「情報」と「お金」の流れを一体化することによって、地域経済は自律的な発展への道を歩み始めるのである。