体調不良でメールをしたら「わかりました。」のみ返ってきた。
・仕事のミスで上司に謝罪したら「はい。」だけが返ってきた。

 読者はこのような返信にどのような印象を抱くだろうか。ある人は「わかりました。」に対して、上司の気持ちが読み取れず不安を覚えるかもしれないし、またある人は「はい。」に怒りの色を感じるかもしれない。

 これは受け手が文末の句点に威圧感を覚えてしまう「マルハラ」という昨年から話題になっている現象で、Z世代を中心に世間の共感を得た。

 そんななか、デジタルの分野でさまざまなコンテンツを提供するバイ ドゥ株式会社(本社:東京都港区)と、名古屋大学の学生研究チーム「JAWS」が共同で取り組んだのが「マルハラをまぁるくプロジェクト」だ。

 読んで字のごとく、マルハラによるコミュニケーションの齟齬(そご)を取り除くことを目標にしたこのプロジェクト。5月14日には当プロジェクトのプレス向け成果発表会が行われ、バイ ドゥのプロダクト事業部・古谷由宇氏と調査に関わった愛知大学の学生4人が登壇。

「マルハラ」の体験談と関連するリサーチ結果を報告するとともに、当プロジェクトの一環として開発され、同社開発のきせかえ顔文字キーボードアプリ「Simeji」に実装された新機能「まぁるく変換」「いろいろ感情」についての説明があった。

 古谷氏によると、「マルハラに着目した『JAWS』の学生さんたちが“オンラインコミュニケーションの快適化”に関する提案をバイドゥに寄せたことがプロジェクトの発端」とのことで、愛知大学の黒野さんはトークセッションの中で「『マルハラ』『おじさん・おばさん構文』といったテキスト表現の難しさに対して興味と課題意識を持ったことが研究を始めたきっかけ」と語った。

 共同リサーチで、「文末に『。』がついたメッセージが来て、こわい・つらいと感じたことがあるか」との質問にZ世代(15~29歳)の約3割が「はい」と回答した一方で、30代以降ではその割合が大きく下がる傾向があり、「句点」への印象に世代間ギャップがあるということが判明。

 さらに、「上司や先輩などからお願いされるとき、どちらの方がモチベーション高く対応できるか」という質問に対してZ世代の約68.8%が「手を合わせてお願いポーズをする絵文字」のほうがモチベーションが上がると回答。

 また、「絵文字付きのメッセージでで“嬉しい”“心が軽くなった”と感じた経験があるか」という設問には、30歳以上の73.0%が肯定的に回答。絵文字が世代を越えて好影響を与えている事実があることもわかった。

 愛知大学の瀬尾さんが語った、体調を崩してアルバイト先の店長にLINEで休みの連絡をした際、「了解(グッドマーク) お大事に」と返事が届き“ホッとした”という実体験からも、文末に「。」ではなく絵文字を用いることでコミュニケーションが円滑に進む可能性を示した。

 例えば、冒頭の「がんばろう。」「連絡して。」という短文も、「がんばろう(拳の絵文字)」「連絡して(両手を合わせた絵文字)」では与える印象が大きく違うはずだ。つまり、同じ文章でも文末にひと工夫を加えることで、コミュニケーションの質はガラリと変わるといえる。

 このような絵文字や記号の持つ属性に着目して開発された「Simeji」の新機能が「まぁるく変換」と「いろいろ感情」というわけだ。

「まぁるく変換」は入力したフレーズに対して、“文末にちょうどいい絵文字”を添えた例文をいくつか自動で提案してくれる機能で、「。」によって冷たい印象を与えたくないユーザの助けになってくれるだろう。

「感謝」「謝罪」「断り」など、12種類のシーンごとに絵文字を分類した一覧から自分の気持ちに合った絵文字を選べる「いろいろ感情」機能では、テキストでは伝えづらい感情をより自然かつ的確に伝えることができるとのこと。

 実際にこれら新機能を学生たちがデモンストレーションで実演。その完成度に、プロジェクトの発起人である学生たちも驚きと感動を覚えたようだ。

 特に自身の親とのやりとりでは、メッセージがどうしても端的になりがちで、それによって自分の伝えたい意味が届かずお互いに誤解が生まれてしまう……というのは、親子間コミュニケーションのあるあるなんだとか。

 愛知大学の福永さんは「私の親はいつも同じ種類の絵文字しか使わず“人間味がない”と言われることが悩みだったようで、この『いろいろ感情』を見てもらったら『バリエーションが豊かだから選びやすい』と喜んでいました」とその手ごたえを語った。

 漢字を用いる日本語は英語などと違い、「表音文字」ではなく「表意文字」の側面が強く、日本人と絵文字・顔文字は相性がいいとされている。

 本プロジェクトでテキストコミュニケーションによる絵文字の重要性を社会に大いに示した。今後はこれら新機能が若者と大人世代のコミュニケーションの橋渡しツールとして、広く活用されることを期待したい。

提供元・Business Journal

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