世界各地に何の機能も持たない不思議な古代のドアが存在している。それらは山の斜面、砂漠、聖地などに点在し、どこにも通じていない。寺院でも住居でもなく、部屋や通路すら存在しない石の門。ただそこにあるだけの存在だ。だが、その目的は謎に包まれている。果たしてこれは忘れ去られたポータルなのか、スピリチュアルな象徴なのか、それとも現代人がまだ理解し得ないメッセージなのか。

 この奇妙な現象は特定の文化に限ったものではない。ヨーロッパの新石器時代のドルメン、南米アンデスの崖、エジプトの墓、さらにはトルコの先史時代遺跡ギョベクリ・テペに至るまで、文明を超えて広がっている。目的は見えずとも明らかに意図を持って作られた石の開口部が、各地に存在しているのだ。

ペルーの「ヘイユマルカの門」―別世界への入り口?

なぜ? 世界各地に残る“どこにも通じない”「古代のドア」の謎
(画像=By Jerrywills at the English-language Wikipedia, CC BY-SA 3.0, Link, 『TOCANA』より 引用)

ペルー南部のチチカカ湖近くには、「ヘイユマルカの門」と呼ばれる巨大な石の彫刻が存在する。現地では「アラム・ムルのスターゲート」とも呼ばれ、7メートルを超えるその門には中央に小さな窪みがある。

 この門には用途を示す彫刻や文字は一切ない。しかし、地元の伝承によれば、この場所はインカのシャーマンたちが異界へとアクセスするために使っていたという。黄金の円盤を用いてこのポータルを開いたという伝説も残されている。

 主流の考古学ではこれを裏付ける証拠は確認されていないが、構造的な目的を持たないにもかかわらず、高い精度で彫られていることから、何らかの儀式や精神的な通過儀礼の場であった可能性が高いとされている。