では、なぜこれほどまでに人々は本を読まなくなったのでしょうか?
本研究では原因の分析までは行っていませんが、専門家や教育関係者の間ではデジタルメディアの台頭が大きな一因だと指摘する声が多く聞かれます。
米国芸術基金の報告書も「文学は今や膨大な電子メディア群と競合している」と述べており、スマートフォンやソーシャルメディア、動画配信サービスなど娯楽の選択肢が爆発的に増えた現代では、どうしても本から人々の注意がそれてしまいがちです。
実際、アメリカ人は平均して1日6時間以上を何らかの画面(スマホやテレビ)に向かって過ごしているとのデータもあります。
あるNPRの番組ホストは「今や書籍は世の中のあらゆる『コンテンツ』と競争しなければならない」と述べており、情報過多の時代に腰を据えて読書に向かうこと自体が難しくなっている現状を物語っています。
また、読書量の低下傾向自体は実は今に始まったことではなく、スマホやインターネット登場以前の1980年代から既に下降線を辿っていたという指摘もあります。
20世紀後半にはテレビが家庭に普及し、人々の余暇時間を大きく奪ったことが読書離れの遠因になったとも言われています。
これらを踏まえると、近年の急激なデジタル化が拍車をかけたものの、長年にわたる生活様式の変化が徐々に読書文化を浸食してきた側面もあると言えるでしょう。
今回明らかになったように、読書習慣の衰退は特に一部の層で著しく進んでいます。
研究者らは、黒人や低学歴・低所得層、地方在住者、障がいを持つ人々といった読書機会が限られがちなグループに対し、図書館やコミュニティを通じた支援策や働きかけを強化する必要性を訴えています。
「読書推進政策は教育上の理由から子どもに焦点が当たりがちだが、大人も対象に考慮すべきだ」と研究チームは指摘します。
ストレスや抑うつの増加、不眠の蔓延など現代の社会問題に対して、読書が一つの健全な対処法となり得ることを踏まえれば、大人の読書離れにも目を向けることが重要だというわけです。