フランスのマクロン大統領はイスラエルのガザ攻撃を批判し、イスラエルへの武器輸出のストップを呼びけるなど、欧米主要国でイスラエルのガザ戦争への批判がヒート。ガザ区の70%からパレスチナ住民は追放され、ガザ戦争が勃発した直後から、外国ジャーナリストのガザ取材は拒否されている。

そのような中、ドイツ国内でも「ドイツはイスラエルを支援し続けるべきか」、「ガザのパレスチナ人を追放し、イスラエルが自治区を長期管理する政策を模索するネタニヤフ政権を支援すべきか」といった声が出てきたのだ。独週刊誌シュピーゲル最新号(2025年05月17日号)は「複雑な友人」というタイトルの特集記事を掲載していた。具体的には、ホロコーストの戦争犯罪はドイツにとってどのような意味があるのか、ドイツはイスラエル、ユダヤ民族に責任があるのか、といった疑問だ。ガザ紛争はそのドイツ・イスラエル両国関係の再考を促してきたというわけだ。

ドイツでは旧東独で共産圏時代から反ユダヤ主義が強い。イスラエルとアラブ諸国が衝突するたびに、旧東独や左翼党では反ユダヤ主義運動や暴動が起きてきた。

ドイツで今月9日、ホロコーストに生存者マルゴット・フリードレンダーさん(104歳)が亡くなった。ナチス政権の犠牲者が少なくなると共に、加害者のドイツ人も少なくなった。ドイツは現在、移民国家となっている。アラブ諸国から移民者が多く住んでいる。彼らはイスラエルへの憎悪を植えつけられて成長してきた。一方、イスラエルでは中東系ユダヤ人が増え、アラブ系イスラエル人も入れると、欧州系のイスラエル人よりはるかに多い。

シュピーゲル誌は「ドイツ・イスラエル両国関係で‘ニー・ヴィーダー‘(2度としない)をモットーとした国家理念は次第に疎遠となってきた。両国関係を国是以外に定義できなかった時代は終わろうとしている」と報じている。

ドイツでは戦後、ナチス政権の戦争犯罪への反省が国のアイデンティティとなってきた。しかし、シュピーゲル誌が報じたように、そのアイデンティティは次第に疎遠になってきた。それに代わる新しいアイデンティティがまだ見えない。ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)の躍進はその空白から生まれてきた一過性の現象だろうか。

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