RAGエンジンは対話ボット専用ではない

 筆者らはRAG製品発表の後もさらに2年以上かけて(潜在的には四半世紀前の類似検索によるAI支援ナレッジマネジメント以来の時間をかけて)、特に日本語向けに極めて高い精度になるよう磨いてきました。ChatBridは当然ながら自前の辞書(複合語の扱いが絶妙)、トークナイザ、ベクトル・ストレージにより高精度の基礎を作っています。その上の、知識階層の構築、知識体系をLLMが理解したまま小さめの必要十分サイズの知識素片により高精度に回答を紡いでいくあたりについては紙数の関係で、こちらのページ先頭のスライドPDFをご覧ください。

 RAGエンジンは対話ボット専用ではありません。何万点もの商品について多様な顧客に店員が説明し会話する模範対話例を生成させたり、現場の音声対話からその内容の良し悪しを減点法・加点法を併用して採点したり、顧客役を演じつつ最後は上司、コーチに変身して従業員を元気付け育成・指導したりできます。また、大量の評価用のQ&Aをほぼ自動でうまく生成したり、それを用いて最新版の採点を自ら行ったり、人間用の試験問題を「平等重視」あるいはその生徒の理解度・個性に応じて最適化した「パーソナライズド演習問題」を毎週作成して個別指導に役立てたりなども、教科の知識を備えたRAGエンジンの仕事です。ソフトウェアだけ、プラットフォームだけ提供して、上記のような応用のための知識開発、知識デバッグの仕事をエンドユーザに丸投げしてしまっては、いくらノーコード・ソフトウェアの完成度が高くとも、「なーんだ、RAGなんて精度出ないや!」とばかり、使われずに終わってしまいます。

 何百種類も対策がある中で、例えば上記以外にも、より適切なLLMを選択し、適切な正解入出力データでファインチューニングして対応すべき、などと見抜いて適切に効率よく解決していくのは、どうしてもAI、ナレッジマネジメントの専門家の仕事なります。ここが自動化できたら、AI自身が自分の改良方法を見極めて新領域での問題解決のための自学自習でどんどん成長できちゃうわけですから、もはやAGIと呼んでよいでしょう。