勝利を確信したダン氏は18日夜、「抜本的な変化を切望するルーマニア国民の勝利だ。明日からルーマニアの再建を始めよう」と勝利宣言している。一方、シミオン氏は議会で「私がルーマニアの新大統領だ」と宣言し、ダン氏陣営の選挙違反を非難した。しかし、BBCによると、シメオン氏は最終的には自身の敗北を認めたという。

ルーマニア大統領は首相を任命する権限を有している。ダン氏は現暫定大統領のイリエ・ボロジャン氏を将来の政府首脳にしたい希望を繰り返し強調している。

今回の大統領選は再選挙だった。昨年11月24日に実施された大統領選でカリン・ジョルジェスク氏(62)は有力候補とされていたチョラク首相らを抑え、約23%の得票率でトップに躍り出た。ジョルジェスク氏はロシアのプーチン大統領を「国を愛する男」と称賛し、ウクライナを「敵対国家」と呼び、NATOに批判的な姿勢を強調するなど、親ロシア的な立場を明確にしてきた。ルーマニア憲法裁判所は決選投票直前の昨年12月6日、選挙資金の不正やロシアの干渉などを理由に第1回投票の結果を無効とし、12月8日に予定されていた決選投票を中止。そしてジョルジェスク氏は再出馬禁止となり、今年5月4日に選挙の再実施が決まった経緯がある。

いずれにしても、大統領選の結果、国民の約半数が過激な民族主義者のシミオン氏を支持していることが明らかになった。ルーマニアの政情が落ち着きを取り戻すまでにはまだ時間がかかるだろう。

なお、ルーマニア大統領は首相を任命する権限を有している。ダン氏は現暫定大統領のイリエ・ボロジャン氏を将来の政府首脳にし、マルチェル・チョラク首相の辞任で空席となった政権を迅速に組閣して国の刷新に乗り出したい意向だ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年5月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。