2025年1~3月期の実質GDP(国内総生産)速報値が4四半期ぶりに前期比でマイナス成長に陥った。長引く物価高で家計の節約志向は強まり、個人消費は勢いを欠く。4月以降はトランプ米政権の関税政策発動で景気への下押し圧力が強まり、政府・日銀が目指す賃金と物価の「好循環」は正念場を迎える。

◇中小にしわ寄せ

「対岸の火事ではない」。東京都内の機械部品メーカーの社長は、トランプ政権の高関税策に頭を抱える。納品先メーカーが米国での販売落ち込みを見込んでおり、今後生産計画を縮小すれば発注を減らされる恐れがある。「大手企業は在庫で調整できるだろうが、末端の中小・零細企業は発注を切られるのが怖い」と語る。

 米政権は、これまでに自動車や同部品、鉄鋼・アルミニウムに25%の追加関税を発動。好調だった企業業績は、製造業を中心に下押し懸念が高まっている。東証株価指数(TOPIX)構成銘柄の企業が15日までに公表した26年3月期の業績予想をSMBC日興証券が集計したところ、純利益は自動車など「輸送用機器」が前期比18.4%減。「鉄鋼」は同26.7%減と大きく落ち込む見通しだ。

 米国市場への依存度が高く、日本国内からの輸出比率が高いマツダの毛籠勝弘社長は「サプライヤーや販売店には、速やかにサバイバルモードに移行すると伝えた」と危機感をあらわにする。日本製鉄の今井正社長は、余剰になる生産能力を振り向ける先が見当たらず「非常に厳しい状況で、出口がない」と話す。

◇強まる節約志向

 1~3月期のGDPでは、約半分を占める個人消費がほぼ横ばい。歴史的な高騰が続くコメ価格は政府の備蓄米放出後も高止まりし、消費者は節約志向を強める。消費の本格回復には実質賃金のプラスが定着することが不可欠だが、「11月まではマイナスが継続する」(明治安田総合研究所)との見方がある。

 景気を支えてきた好調なインバウンド(訪日客)消費にも変調の兆しが見える。日本百貨店協会が発表した3月の全国百貨店売上高によると、訪日客の購買状況を示す免税売上高は前年同月比で3年ぶりにマイナスとなった。中国の景気減速が背景にあるもようで、「中国の団体客がほとんど来ていない」(高島屋の村田善郎社長)と危惧する声も上がっている。

 米関税の直接的な影響を受けるのはGDPの2割を占める製造業。ある内閣府幹部は「8割を占める非製造業を中心に賃金と物価の好循環を回し続けることが重要だ」と指摘する。ただ、米関税を巡る不確実性の高まりが個人消費に響けば非製造業の業績も低迷し、4~6月期も再びマイナス成長に陥る恐れがある。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「日本経済が景気後退局面に入る可能性は50%程度ある」と懸念している。(了)
(記事提供元=時事通信社)

提供元・Business Journal

【関連記事】
初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?