一方、精子の側もタイミングが合わなければ、いくら優秀でも次のステップへ進むことはできません。

実際に性交のタイミングが排卵期とかけ離れていれば、到着した精子が膣や子宮頸管で力尽きてしまう可能性が高いからです。

こうして適切な時期に応募することで、精子たちはいよいよ次の関門に臨む準備ができるわけです。

運よく排卵期という“募集スタート”に恵まれた精子たちは、まず女性の膣内という非常に過酷な環境へ足を踏み入れます。

膣内は酸性度が高いうえ、射精直後に精液が数秒でゲル状になって固まるのは、こうした酸から精子を守るための防衛策。

その後、30~60分ほどで再び液体化し、精子たちは自由に泳ぎ出せるようになります。

とはいえ、膣内で力尽きてしまう精子も多く、次のステップである子宮頸管まで到達できるのは射精時の精子総数のうちごくわずかだといわれています。

就職活動でいえば、「募集要項に気づき、ちゃんと応募したはいいが、ここで大半が第一関門を突破できずに脱落してしまう」イメージです。

こうして“企業研究”をクリアし、膣内を乗り切った精子だけが、次なる難関である子宮頸管へと進むことができます。

二次試験:基礎能力テスト

二次試験:基礎能力テスト
二次試験:基礎能力テスト / Credit:clip studio . 川勝康弘

膣内の関門をくぐり抜けた精子が次に直面するのは、子宮の入口である子宮頸管です。

ここには粘液が満ちていて、普段は精子や細菌の侵入を防ぐ“フィルター”のような役割を果たしています。

しかし排卵期が近づくと粘液がゆるみ、精子にとって通りやすいルートに変化。

それでも粘液の流れが強いため、泳ぐ力の弱い精子はこの段階で足止めされてしまいます。

さらに近年の研究では、子宮頸管の内壁には“マイクログルーブ”と呼ばれる細い溝があり、この溝を上手に泳げる精子ほど子宮までたどり着ける可能性が高いとわかってきました。

要するに、運動性能に優れた精子しかここを突破できないのです。