結果、90分間の総運動量は通常群の約3倍に達しました。

さらに同じ時間帯に脳波では覚醒を示す低振幅・高速波が増え、SWSは平均30%減少、REMは平均40%減少しました(n=6、p<0.05)。

覚醒時間と運動量の相関係数は0.80で、行動と脳状態が同期していることが確認されました。

さらにEEGを翌朝まで継続したところ、夜間に睡眠時間が著しく増えるリバウンドは検出されず、総睡眠量と波形の質はほぼ通常範囲に収まりました。

(※注意:永遠に眠気と決別できるわけではありません。)

TTFDは過去の薬理データで6〜12時間以内に8割が代謝・排泄されると報告されており、薬効期間と覚醒延長が概ね一致しました。

つまり「効いているあいだだけ自然にシャキッとして、切れたらスムーズに通常運転へ戻る」というわけです。

ビタミンB1誘導体はカフェインに代わる次世代ブースターになるか?

ビタミンB1誘導体はカフェインに代わる次世代ブースターになるか?
ビタミンB1誘導体はカフェインに代わる次世代ブースターになるか? / Credit:Canva

今回の結果を日常の光景にたとえるなら、TTFDは眠気でエンストしかけた脳にハイブリッド車の「モーターアシスト」を追加したようなものです。

投与直後に前頭前皮質でドーパミン信号が高まり、行動を計画する司令塔が“起動スイッチ”ごと押し上げられたと考えられます。

腹側被蓋野(VTA)が報酬予測のガソリンを噴射し、青斑核(LC)由来と推定されるノルアドレナリンが脳全体を覚醒モードへ導く可能性があります。

従来の興奮剤が神経を強制的に叩き起こすのに対し、TTFDはドーパミン経路を穏やかに底上げするため、アデノシン蓄積による強烈な眠気リバウンドが抑えられるのかもしれません。

もし人間でも同様の機序が働けば、夜勤前の医療スタッフや長距離フライト後のビジネスパーソン、軽度の無気力感に悩む人々にとって、カフェインとは異なる“栄養系ブースター”となる可能性があります。