米OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏らが2019年に立ち上げたプロジェクト「World」。4月30日に米国で開催されたイベント『At Last』では「Worldcoin (ワールドコイン:WLD)」「World App」などの新たな取り組みや新機能「World Chat」、新たなグローバルパートナーシップ「Razer」が説明され、話題を呼んだが、ユーザ認証の仕組みとして使用されているのが「World ID」だ。その精度の高さから「究極の生体認証」とも呼ばれる虹彩認証が採用されており、専用の虹彩スキャン装置「Orb」を用いて、個人の唯一性を証明するIDとして発行されるもの。このシステムの特徴は、生体認証データそのものを保存せず、暗号化された「虹彩コード」のみを使用する点にある。これにより、プライバシーを保護しながら、なりすまし防止や「1人1アカウント」の原則を実現している。

 プロジェクトの規模は急速に拡大しており、現在、1000万人以上がOrbによる虹彩認証を完了しているという。日本国内でも数十カ所の認証会場が設置され、着実に普及が進んでいる。そこで今回は実際にOrbを使ってWorld IDの発行、そして認証を体験してみた。

次世代認証技術としての虹彩認証

 指紋認証や顔認証はスマートフォンでおなじみだが、生体認証の世界ではより高精度な方式として虹彩認証が注目を集めている。虹彩認証が持つ優位性は、その安定性と信頼性にある。虹彩は年齢による変化が極めて少なく、生涯にわたって安定した認証が可能だ。また、非接触での認証が可能なため、衛生面でも優れている。さらに、なりすましや偽造が極めて困難という特徴を持つ。

 ただし、この技術にも課題はある。指紋認証と比較すると、専用の赤外線光源やセンサーが必要となり、導入コストが高くなる傾向にあるという点だ。また、照明条件や撮影距離によって認証精度が影響を受けることも指摘されている。