ある研究によって、脳と精巣(または睾丸)には多くの類似点があると判明しました。

ポルトガル・アヴェイロ大学(Universidade de Aveiro)生物医学研究所に所属するマルガリダ・ファルディリャ氏ら研究チームは、人体に含まれる33種類の器官とそのタンパク質を比較。

そして脳と精巣が1万3442個のタンパク質を共有していると発見したのです。

研究の詳細は、6月2日付けの科学誌『Royal Society Open Biology』に掲載されました。

目次

  • 脳と精巣は1万3442個の共有タンパク質をもつ
  • 脳と精巣の共通点は「物質の放出プロセス」だった

脳と精巣は1万3442個の共有タンパク質をもつ

脳と精巣には、以前からいくらかの関連性が認められていました。

例えば、ある研究では、脳障害と性機能障害、また知能と精液の質における関連性が指摘されています。

そして今回の研究は、なぜ脳と精巣にそれら関連性がみられるのかを説明するものとなりました。

最初に研究チームは、脳、精巣、心臓、腸、卵巣、胎盤を含む33種類の器官のタンパク質を比較しました。

脳と精巣は13,442個の共有タンパク質をもつ
脳と精巣は13,442個の共有タンパク質をもつ / Credit:Margarida Fardilha et al., Royal Society Open Biology(2021)

その結果、それらの器官の中で、脳と精巣がもっとも多くのタンパク質を共有していると判明。

人間の脳を構成する1万4315個のタンパク質と、精巣を構成する1万5687個のタンパク質のうち、1万3442個のタンパク質が両方に共通していたのです。

この発見は、「脳と精巣がすべての器官の中で最も多くの遺伝子を共有している」という遺伝子発現研究によっても裏付けられています。

では、どうして脳と精巣はこれほど酷似しているのでしょうか?研究はその理由も明らかにしています。

脳と精巣の共通点は「物質の放出プロセス」だった