モイラン議員はそのグアム島の防衛強化を2022年の初当選のころから主唱してきた。その過程では日本との防衛協力をも強く推奨してきた。
私は議会で日米防衛協力について取材するうち、モイラン議員と知り合うと、同議員は日本の防衛政策への強い関心を示し、多様な質問をも浴びせてきた。そしてグアム島の軍事能力についても説明し、日本との連携強化が欠かせないのだと強調した。そのうちモイラン議員は彼の議員事務所にまで私を招き、意見や情報の交換を求めるようにもなった。
そんなモイラン議員から5月はじめ、情報が届いた。下院軍事委員会で「グアム防衛システム」への2025年度の追加予算の2億ドルの支出が決まった、という通知だった。
「グアム防衛システム」とはアメリカ軍がグアム基地に艦対空のSM-3(弾道弾迎撃ミサイル)やSM-6(同)、THAAD(高高度迎撃ミサイル)、Patriot PAC-3(ぺトリオット地対空誘導迎撃ミサイル)など多様な防空ミサイルを配備して、迎撃網を360度の全方向に完備するという構想である。トランプ政権はそのためのミサイル防衛拠点をグアム島内に少なくとも16ヵ所建設する計画で、総予算は約150億ドルが予定されているという。
今回、下院軍事委員会が可決したのはそのうちの2025年度分予算の追加分で、全体からみれば少額だが、グアム島選出のモイラン議員としては大きな朗報ということで関係筋に広範に知らせている次第だという。
グアム島の米軍基地の防衛強化は日本にとっても尖閣有事や台湾有事に備えての米軍の堅固な支援の拠点となる。だからそのグアム基地の対中国ミサイル防衛網の増強は日本としても歓迎すべき動きだろう。
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古森 義久(Komori Yoshihisa) 1963年、慶應義塾大学卒業後、毎日新聞入社。1972年から南ベトナムのサイゴン特派員。1975年、サイゴン支局長。1976年、ワシントン特派員。1987年、毎日新聞を退社し、産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長、ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員などを歴任。現在、JFSS顧問。産経新聞ワシントン駐在客員特派員。麗澤大学特別教授。著書に『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす』『米中激突と日本の針路』ほか多数。