参加者の目の動きは、目・鼻・口・髪・頬・顎・首・額といった細かい顔のパーツごとにアイ・トラッキング装置で測定され、どこにどれだけ注目したかが注視時間を1/60秒単位で記録されました。
こうして得られた視線のデータと、魅力度の評価を突き合わせることで、人が相手の顔のどこを見て魅力を感じているかが明らかになったのです。
相手の顔の惹かれるポイントは男女で明確に違う
分析の結果、人は顔全体の中でもとくに目・鼻・口といった“顔の中心部”に視線を集中させる傾向があることがわかりました。
しかし注目すべきは、魅力度を評価しているときに表れる男女の違いです。
男性が女性の顔を見る場合、もっとも長く視線がとどまったのは「口元」でした。そして、その注視時間が長いほど「この人は魅力的だ」と評価する傾向が強くなったのです。

一方で女性が男性の顔を見るとき、注視の中心は「目」と「髪」に移ります。これらの部位に視線を多く送ったとき、魅力度の評価が高くなる傾向がはっきりと示されたのです。
では、なぜこのような差が生まれるのでしょうか? その背景には、進化の歴史と私たちの無意識の判断基準が関係していると考えられています。
男性は、パートナーの「若さ」や「健康状態」を手がかりに魅力を感じやすい傾向があるとされます。ふっくらとして血色の良い唇は、ホルモンバランスや体調の良さを反映することが多く、健康的なイメージを与えます。
そのため、男性が口元に注目するのは、生物学的に「繁殖力」の指標を無意識に読み取ろうとしている行動と解釈できるのです。
一方で女性は、相手の「誠実さ」や「信頼感」、つまり長期的な関係を築けるかどうかを重視するとされます。人の感情は目に強く表れるため、目を見ればその人の内面がある程度伝わってくると感じる人も多いでしょう。また、髪からは清潔感、生活習慣や自己管理能力といった日常の姿を想像させる手がかりになると考えられます。
