スペイン・サンチェス政権、中国への接近を開始

スペインのサンチェス首相の外交姿勢は、従来の米国重視から中国寄りへとシフトしつつある。先月、サンチェス氏は中国を訪問した。これは、米中間で関税問題が激化していた最中であった。

この訪問に対し、米国のベッセント財務長官は強い不満を示した。スペインはフランコ独裁政権時代から一貫して米国寄りの外交方針を採ってきたため、サンチェス首相の中国接近は米国側からの反発を招いたのである。背景には、バイデン政権もトランプ政権も、社会主義色の強いサンチェス政権を冷遇してきたという経緯がある。

米国からの報復を恐れるサンチェス政権

サンチェス政権は米国からの報復を警戒し、クエルポ経済相を急遽ワシントンに派遣。ベッセント財務長官との会談を実現させた。米国側は冷ややかな反応を示したものの、会談は形式的には無難に終了した。

スペイン高速鉄道Boarding1Now/iStock

しかし、その2日後の4月16日、トランプ政権はスペインの鉄道公社レンフェ(Renfe)が受け取る予定だった高速鉄道プロジェクト向けの補助金6390万ドルの支給を撤回すると発表した。これは、レンフェが2021年に締結したテキサス州での高速鉄道(AVE)建設に関する契約に基づくものであった。

スペイン国内では、この補助金撤回はサンチェス首相の中国訪問に対する報復措置と受け止められた。ただし、同プロジェクトには日本のJR東海も関与していることは、あまり知られていない。

米国側の説明によれば、建設費が最大400億ドル規模に膨らむ可能性があるため、採算性に問題があるとして撤回を決定したとされる。

なお、当初の計画では、ダラスとヒューストンを約386キロで結び、所要時間は90分と見込まれていた。レンフェは2042年までに約50億ユーロの利益を見込んでいたという。

米国が突きつけたさらなる要求

クエルポ経済相とベッセント財務長官の会談では、米国側は「Google課税」の撤廃を求めた。また、スペインの軍事費増額も要請した。現在、スペインの軍事費はGDP比で1.29%と、NATO加盟国中で下から2番目の水準である。