今回の大統領選は再選挙だった。昨年11月24日に実施された大統領選でジョルジェスク氏(62)は有力候補とされていたチョラク首相らを抑え、約23%の得票率でトップに躍り出た。ジョルジェスク氏はロシアのプーチン大統領を「国を愛する男」と称賛し、ウクライナを「敵対国家」と呼び、北大西洋条約機構(NATO)に批判的な姿勢を強調するなど、親ロシア的な立場を明確にしてきた。ルーマニア憲法裁判所は決選投票直前の昨年12月6日、選挙資金の不正やロシアの干渉などを理由に第1回投票の結果を無効とし、12月8日に予定されていた決選投票を中止した。そして今年5月4日に選挙の再実施を決定した経緯がある。
今回第1位となったシミオン氏の支持層はジョルジェスク氏と重なる。シミオン党首は自身が当選すればジョルジェスク氏を首相に任命すると約束し、同氏の票を吸収することに成功している。
東欧諸国の中でハンガリーのオルバン首相、スロバキアのフィツオ首相は欧州連合(EU)に批判的であり、ロシアのプーチン大統領との友好関係を構築している。フィツオ首相は9日モスクワで開催される対独戦争勝利80年記念イベントにEU加盟国で唯一、参加する予定だ。また、ブルガリアでは極右「復活党」が躍進するなど、東欧全域で右傾化が拡散してきた。
そしてルーマニアで近い将来、極右政権が誕生する可能性が出てきた。シミオン氏が大統領選で勝利すれば、NATOの東側防衛に支障が出てくるかもしれない。EUやNATOの対ウクライナ支援問題で加盟国の結束がこれまで以上に難しくなることが必至だ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年5月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。