トランプ米政権の一連の関税措置を巡り、日米間の駆け引きが激しさを増している。既に発動している自動車を中心に高関税措置の景気への悪影響が顕在化しつつある中、米国車や米産農産物の輸入拡大につながる措置などを交渉材料に、関税措置の見直しを引き出したい考えだ。米側も貿易赤字削減に向けた成果を早期に示したいとみられ、6月の首脳間の合意を視野に事務レベル、閣僚レベルの折衝を加速させる。

◇1時間100万ドルの損害

「日本のある自動車メーカーでは、1時間100万ドルずつの損が出ている状況だ」。

 ワシントンで1日午後(日本時間2日午前)に開かれた2回目の担当閣僚による交渉会合。赤沢亮正経済再生担当相は終了後の記者会見で、こう危機感をあらわにして米国による輸入車への25%追加関税見直しを実現する必要性を強調した。3日にも発動する自動車部品への25%の追加関税も「見直しを求めた」と明らかにした。

 裾野が広い自動車産業は、日本経済を支える屋台骨。対米輸出の3割超を自動車や部品が占めており、高関税が長期化すれば、雇用や景気への打撃は大きい。米国の自動車関税見直しは、譲れない最優先課題だ。

 日銀は1日公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、2025年度の経済成長率の見通しを従来の前年度比1.1%から0.5%へと大幅に引き下げた。植田和男総裁は「海外経済が減速し、企業収益が下押しされ、成長ペースは鈍化する」と警戒を強める。

 日本政府は、短期の交渉で国内の反発が少ない分野を議論して大枠での合意を実現し、その後に時間を要する交渉に取り組む「2段階交渉」戦略も念頭に置く。夏の参院選を見据え、コメの輸入拡大など反発が強い分野を先送りしつつ、外交実績をつくりたいとの政治的な思惑も透ける。

◇トランプ氏、日本を揺さぶり

 米国も金融市場の不安定な動きが続く中、早期に合意し、成果を示したい考えだ。ベセント財務長官は1日、米メディアのインタビューで、「アジアの貿易相手国に集中している。迅速に動いている」と話し、日本やインド、韓国などとの協議が進展していると強調した。

 米国では、各国・地域との交渉で成果が得られないまま、相互関税の一部停止期限の7月上旬を迎えれば、米国債売りにドル安、米株安が重なる「トリプル安」となった4月の深刻な金融市場の混乱が再燃しかねないとの懸念が強い。「可能な限り早期に合意を実現したいのは、日米閣僚間で一致している」(日本側同行筋)という。

 ただ、就任当初の支持率に陰りが見られる中、高関税措置の成果を誇示したいトランプ大統領は、日本への揺さぶりを続けている。先月25日には「日本とは大変うまくいっている。合意はかなり近い」と発言。一方、同29日の演説では「日本で自動車を造らせたくない。海外製は必要ない」と挑発し、自動車関税維持へ強硬姿勢を示した。

 石破茂首相は日本時間2日、記者団の取材に、首脳合意に関し「国益を譲ってまで早く妥結すればいいものではない」とけん制した。日米の神経戦が続いており、交渉の行方は予断を許さない。(ワシントン時事)
(記事提供元=時事通信社)

提供元・Business Journal

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