スタッド・セバスティアン・シャルレティ(パリFC)写真:Getty Images

 5月2日にフランス2部パリFCがリーグ・アンへの昇格を決めた。来2025/26シーズン、パリを拠点とする2つのサッカークラブ、パリ・サンジェルマン(PSG)とパリFCが、35年ぶりにトップディビジョンでプレーすることになる。

 しかし、なぜ35年もかかったのか。パリは優れた選手を輩出しながらも、欧州の他の大都市とは異なり、トップクラブが少ない構造的背景があるようだ。スポーツ歴史研究者ポール・ディーチー氏がAP通信で指摘している。

 同氏によれば、フランスのプロクラブの発展を妨げた理由は以下の通り。第二次世界大戦以降の資本主義国との関係悪化や国有化による支援企業の減少が影響し、フランスでサッカーが人気スポーツとなったのが1930年代から40年代と遅かったこと。パリには様々な娯楽があり、サッカーが強いアイデンティティを構築できなかったこと。さらにソビエト連邦に影響を受けたアマチュアスポーツの理念が、フランスの共産主義的地域(とくにパリ郊外)に広がっていたことだ。

 2011年にカタール資本の支援母体QSI(カタール・スポーツ・インベストメント)がPSGを買収して以降、PSGは13シーズンでリーグ・アンを11回制し、国内シーンを支配している。

 フランスのサッカーアカデミーはブラジルやスペインと並び世界最高水準とされ、FWカリム・ベンゼマ(アル・イテハド)やFWキリアン・ムバッペ(レアル・マドリード)といった選手を輩出してきた。一方で、クラブの国際的成功は乏しく、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)を制したのは1993年のオランピック・マルセイユのみである。

 1969年設立のパリFCは、フランス最富裕家族であるベルナール・アルノー氏率いるアルノー家に2024年11月29日に買収され新たな展開を迎えた。元リバプール監督ユルゲン・クロップ氏の専門知識を活用した野心的なプロジェクトも計画され、レッドブルも少数株主として参加している。