2025年1月に誕生した第2次トランプ政権。就任早々「パリ協定」からの脱退を決め、再生可能エネルギーへの政府支援を大幅に縮小すると発表。これにより、アメリカの脱炭素の動きが後退し、脱炭素業界やカーボンクレジット企業に対し急速に逆風が吹いているのでは? という懸念がささやかれています。
カーボンクレジットとは、企業間でCO2の排出削減量を売買できる仕組みのこと。他社の削減分を購入し、自社の排出分を相殺するものです。 実際、トランプ政権下においてカーボンクレジット企業は大丈夫なのでしょうか?また、カーボンクレジットの活用は変わっていくのでしょうか?
今回は、自然由来のカーボンクレジット創出および販売事業を行うGreen Carbon株式会社 代表取締役 大北潤氏に、トランプ政権下における脱炭素業界への影響や日本のカーボンクレジット企業の今後、Green Carbon株式会社の展望などについてお聞きしました。
カーボンクレジット市場への逆風は日本への追い風に!?
ーー第2次トランプ政権の誕生で、アメリカが急速に脱炭素領域から距離を置いているように見えます。これによって、脱炭素の流れに逆風が吹いていると感じますか?
アメリカのパリ協定からの脱退は、ダイナミックな動きではあるものの、潮流の変化や逆風はないと感じています。すでにアメリカでは、民間企業が脱炭素に向けて動き出していますし、トランプ政権の方針を見て、企業が「脱炭素に関わるアクションをストップする」という動きをしている様子もないですね。また、トランプ政権の動きに対して私や当社は、「環境問題に興味がない」ということではないと解釈しているんですね。トランプ政権には「アメリカ経済にプラスになること以外はしたくない」という意図があり、今後環境分野がアメリカ経済に対してポジティブに働くようになれば今とは違う動きになると考えています。
ーー日本にもあまり影響はない、と考えていますか?
そうですね。日本においても、フィナンシャルグループや野村ホールディングス、農林中央金庫などが、脱炭素をめざす金融機関の国際的な枠組み「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」から脱退したという動きはあるものの、これは数ある団体のひとつからの脱退にすぎず、脱炭素に舵を切ろうとしている国の方針を否定するものではありません。逆に、日本企業にとってはチャンスであるとも考えています。
ーートランプ政権の動きが、日本企業にとってプラスに働く理由はなんでしょうか?
現状アメリカが脱炭素などの環境分野から距離を置くということは、極端にいえば「国としてGX企業を支援しない」ということです。環境分野などの社会課題解決型の事業は、国の政策と補助金ありきで成り立っているものも多いので、アメリカにおいて環境分野のスタートアップ企業が減少する可能性もあると考えています。 そうなると、日本やEU発のGX企業が台頭しやすくなりますよね。我々のような企業がナンバーワンになれる可能性がある分野だと感じています。