習近平国家主席(中国共産党新聞)とトランプ大統領(ホワイトハウスX)

第二次トランプ政権の誕生が現実味を帯びる中、世界は再び大きな分岐点に差しかかっている。トランプ大統領の関税政策は、単なる自国第一主義にとどまらず、米中両国による経済圏の覇権争いの最前線となっている。

一方で、中国共産党は独自のイデオロギーと政治体制を背景に、人民元を中心とした経済圏の確立を目指している。米中の経済戦略は単なる貿易摩擦を超え、通貨、価値観、そして支配構造をめぐる新たな「冷戦構造」の様相だ。

トランプ経済圏とは何か

トランプ大統領が掲げる「アメリカ・ファースト」の根底には、アメリカ国内の複合的課題がある。不法移民、経済格差、国際社会での影響力の低下、さらにはインフレ抑制など、内政の不安定化といった問題だ。

こうした課題への対応として浮かび上がったのが、いわゆる「トランプ経済圏」の構想である。これは単にアメリカ一国の保護主義政策ではなく、関税やサプライチェーン再編を通じて、米国主導の新たな経済ブロックを構築する試みだ。特徴としては、以下の点が挙げられる。

① 米国本土への製造業回帰 ② 北米や中南米との経済協調の強化 ③ ドル基軸体制の維持と国際金融への影響力行使 ④ 安全保障と貿易を一体化した経済安全保障戦略

つまり「トランプ経済圏」とは、米国の主権と経済的独立を再定義しつつ、グローバル経済の脱中国化と再米国化を目指す枠組みである。従来の自由貿易体制とは一線を画し、国家主導による戦略的通商体制への回帰と見るべきだろう。

アメリカは長らく、基軸通貨ドルを軸に国際経済を支配してきた。ベトナム戦争や中東戦争をはじめとする他国の紛争への関与の多くも、米ドルの信認維持と通貨覇権の防衛が裏にあった。近年、グローバル経済の中で消費大国アメリカの地位は揺らぎつつあり、2023年には国内で消費される製品のうち約40%が海外で生産されたものであった。