今回のプロセスの特徴は、木の構造を壊すことなく、あたかも木そのものがナノ鉄を取り込んだかのような形で、内側から「木を強化する」点にあります。

では、この方法で生まれた木は、いったいどんな性能を持っているのでしょうか?

ナノ鉄を注入した新木材は剛性と強度が跳ね上がる

研究チームが新しい強化木材を分析したところ、その剛性が260.5%、硬度が127%も向上していることが分かりました。

つまり、通常の木材と比較して、3倍以上の「曲がりにくさ」、2倍以上の「傷つきにくさ」を手に入れたことになります。

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新材料のマイクロCT画像 / Credit:FAU

それでいて、木材の重量は「ごくわずかに」しか増加していないと報告されています。

つまり、「軽さはそのまま、強さだけが劇的に向上した」という、非常に効率の良い強化が実現したのです。

また、このナノ粒子は自然界にも存在し、無毒で安全性が高いという点も注目に値します。

毒性や環境影響への懸念なく、実用的な建材としての使用が検討できるのです。

今のところ、破断のしかた自体は未処理の木材と変わらず、これは細胞間の接着が変わっていないためとされています。

しかし、細胞壁自体はしっかりと強化されており、構造材や家具などの強度を要する用途に大きな可能性を秘めています。

軽くて強くて無毒、そして木のぬくもりをそのまま残した新素材。

鉄やプラスチックに代わる持続可能なハイブリッド材料として、未来の建築・インテリア・輸送分野での活躍が今から期待されます。

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参考文献

Iron-fortified lumber could be a greener alternative to steel beams
https://newatlas.com/materials/iron-fortified-wood/

‘Wood You Believe It?’ FAU Engineers Fortify Wood with Nano-Iron
https://www.fau.edu/newsdesk/articles/nano-iron-wood-technology