一方、今回テストされたのはH5N1ウイルスと大腸菌(E. coli)でしたが、電極表面に異なる抗体やアプタマーを固定化することで、他の病原体にも応用できる可能性があります。
例えばインフルエンザウイルスの別の型や、新たに出現したウイルスなど、狙いたいターゲットを変えるだけで柔軟に対応が可能というのは、大きな強みです。
こうしたマルチプレックス化(複数の病原体を同時検出)に成功すれば、感染症監視の効率が格段に高まることが期待されます。
結局のところ、この研究の意義は「空気中のウイルスを、短時間で直接計測する」というコンセプトを実証した点にあります。
従来の方法よりも短時間・少ない労力で定点観測ができるようになれば、流行の拡大前に早期警戒が可能となり、人獣共通感染症を含むさまざまな感染症対策に役立つでしょう。
今後は実証実験や臨床応用のための改良、そして社会実装へ向けたロードマップの策定など、解決すべき課題もありますが、今回の技術がもたらす“迅速・簡易・高感度”という新しい価値が、ウイルス監視の新たなスタンダードを生み出すかもしれません。
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元論文
Capacitive Biosensor for Rapid Detection of Avian (H5N1) Influenza and E. coli in Aerosols
https://pubs.acs.org/action/showCitFormats?doi=10.1021/acssensors.4c03087&ref=pdf
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者