そもそも今回の判決は、RN党に200万ユーロもの罰金が課せられただけでなく、党首のル・ペン氏は首謀者とされ、10万ユーロの罰金の他、懲役4年。収監はされないまでも、2年はGPS付きの足輪を付けなくてはならず、その後の2年は執行猶予。まるで重罪犯だ。その他、同党の23人の有力政治家も有罪となった。

ただ、奇妙なことにドイツでは、罪状について詳しく報道しているメディアがほとんどない。実は、ルペン氏が罪に問われたのは、04〜17年、氏が欧州議員だった時のことで、そこで雇っていた職員が、EU議会のためだけでなく、党のためにも働いたため、公金である給料が不正に使用されたという非難だ。

もちろん、公金の流用は良くないが、ただ、ル・ペン氏が流用を指示したわけでもなく、それどころか、流用だと認識していたかどうかも怪しい。しかも、どこまでがEUの職員としての仕事で、どこからが党の仕事ときっちりと線を引くことはおそらく難しく、このようなケースは、他の党でも探せばいくらでも出てくるはずだ。ましてや、ル・ペン氏の場合のように、20年も前まで遡れば、なおさらだ。

だから、そこらへんをちゃんと報道すると、おそらく、「え? それで大統領選に出られなくなったの?」と不審に思う人が続出するのではないか? また、ドイツでも、都合の悪い政治家がたくさんいるかもしれない。

しかし、そんな微妙な状況にも関わらず、昨年の11月に検察が求刑。すると、たったの5ヶ月で有罪判決が下った。しかもその判決が、フランスの政治の流れを変えるかもしれないほど重要な政治的意味を持っているわけだ。

そのため国内外の保守派からだけでなく、本来ならル・ペン氏とは意を異にする国内の政治家からも、これは政治裁判ではないかという疑問の声が挙がった。6日には、フランス全土で、大々的な抗議デモも起こった。司法が大統領選の流れを操作すれば、三権分立や民主主義は崩れる。大統領を決めるのは裁判官ではなく、あくまでも国民による選挙だというのが、フランス人の考え方である。