同じように、ショルツ首相は、「プーチン大統領は10センチの追加領土をウクライナから奪ったロシア大統領という称号を受けるために権力の狂気に動かされている」と、辛辣に批判しているのだ。すなわち、ミシェル大統領もショルツ首相も3年目に入ったウクライナ戦争の責任者プーチン氏に対して、もはや外交上やプロトコール上の儀礼、規則を重視することをやめ、皮肉を込めて相手国首脳を酷評しているわけだ。ウクライナ戦争での政府首脳陣のコミュニケーションは既にエスカレートしてきているわけだ。
風刺や皮肉はシンプルな批判より時には相手を傷つける。風刺や皮肉の対象となったプーチン氏は心穏やかではないかもしれない。嘲笑を受けたと思って激怒するかもしれない。それとも「あなたは自分が正しいと思う事をしなさい。どのみち批判されるのだから」といったルーズベルト米大統領の夫人の言葉を引用して、プーチン氏は納得顔で「私のことをいっている」と思って笑い出すかもしれない。
ウクライナ戦争も3年目に入ると、戦争は消耗戦となり、関係者にも疲れが見え出し、もはや何も建設的なことが思いつかなくなる。だから、政府指導者は相手を直接批判するより、気の利いた風刺や皮肉のひとつでも、ということになる。ただ、その間も戦場では多数の兵士たちが犠牲となっている。
参考までに、親ロシア派の鈴木宗男参院議員はプーチン氏の5選を祝う祝意を表明し、「史上最高の得票率での圧倒的勝利は、プーチン氏の手腕と能力が評価された結果だ。西側メディアが反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の獄死に関連してロシアに対する批判を強めたことによって、ロシア国民が『プーチン氏を守りたい』という思いを強めた」(時事通信)と述べたという。このようなプーチン崇拝のコメントが日本の参院議員から出てきたことに驚いた。欧州の左派系政治家もきっと顔負けする異次元なコメントだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年3月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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