では、これらマイクロプラスチックを水の中から取り除くことは可能でしょうか。

研究チームは「水に投げ込むだけ」で浮遊するプラスチックをまとめて集め、簡単に回収できるアイテムを作ることを目指しました。

そこで誕生したのが「マイクロクリーナー」です。

次のセクションで、この新しい道具がどんな仕組みで動くのかを見ていきましょう。

投入するだけで、マイクロプラスチックを「集めて」水面に「浮かべる」マイクロクリーナー

マイクロクリーナーは、軟質樹枝状コロイド(SDC)という特殊な粒子を使っています。

この軟質樹枝状コロイド(SDC)は、カニや貝の殻から作った天然高分子キトサンを加工して作られています。

海から得られた天然素材を使用することで、このアイデアをより持続可能なものにしているのです。

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マイクロクリーナーがプラスチックを回収するメカニズム / Credit:Orlin D. Velev(North Carolina State University)et al., Advanced Functional Materials(2025)

このSDCには、マイクロプラスチックを捕まえる力がありますが、ただ水中に入れるだけでは、効率よく回収できません。

そこで研究チームは、まず、小さなSDC粒子を乾燥させ、ペレット状にまとめました。

次に、ペレットの一部に植物由来のオイルを塗布。

これは分散剤として働き、水の表面張力の違いを利用してペレットが自動で水面を動き回りつつ、少しずつ溶けるようにします。

加えてSDCには、ゼラチンでコーティングしたマグネシウム粒子も注入されており、これが「浮輪のような役割」を果たします。

マイクロプラスチックを捕まえたSDCは沈みますが、ゼラチンが水に溶けてマグネシウム粒子が顔を出すと、小さな泡が発生。

この泡がマイクロプラスチックを抱えて水面へ浮かび上がらせるのです。

このようにして作られたマイクロクリーナーは、水に投入するだけで、水中のマイクロプラスチックをからめとり、水面にまとめて浮かべてくれます。

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マイクロクリーナーを水の中に投入するだけで、マイクロプラスチックを集めて水面に浮かべる新アイテム / Credit:Orlin D. Velev(North Carolina State University)et al., Advanced Functional Materials(2025)