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4月17日号のNature誌News欄に「Invasion of the ‘journal snatchers’: the firms that buy science publications and turn them rogue」という記事が出ている。和訳すると「雑誌社泥棒の侵略:学術論文を乗っ取り不正を働く企業」ということか。
学術雑誌のオンライン化が進み、急速に不正行為が広がっている。かつては、出版には膨大な印刷インフラが必要であったので、簡単に雑誌を出版することなどできなかった。しかし、いまや、学術雑誌はオンライン化が行われ、印刷工場が不必要となった。
そこで登場したのが、ハゲタカ出版社と呼ばれている、まともな論文の評価もせず、どんどんと論文をオンライン上で掲載し、莫大な出版料を稼ぐ出版社だ。研究者は、評価に論文数という指標があるために、このような雑誌を選んで論文を発表しようとする傾向にある。
Nature誌やScience誌に発表した論文でも再現性の欠ける論文が少なくないが、研究の内容を評価できる人材が欠如する日本に限らず、多くの国で、有力雑誌への発表を追求するか、論文数を追求するかになってしまう。
ところがハゲタカ雑誌のラベルがつくと、それらの雑誌は敬遠されがちになるので、新たな手口として、それなりの評価を受けている雑誌そのものを買収して、それらを窓口に論文の出版料を稼ぐ人たちが現れたというのだ。
Nature誌のニュース記事によると、少なくとも36の雑誌が乗っ取られているそうだ。乗っ取られた雑誌は、論文掲載料を高くして、しかも出版する論文数が急増している特徴があるとのことだ。
論文を発表する経費は非常に高く、数十万円から百万円を超える場合もある。仮に50万円で、年間1000論文を掲載すると、5億円の売り上げになる。紙で出版しなければ経費は限られており、大きな収入となる。これらの雑誌買収はステルス的に行われ、かつ、買収した企業は科学とは無縁らしいのだ。