この中から選ばれた多数の音声クリップを3,000人以上のオンライン参加者に聴かせ、記憶課題に取り組んでもらいました。
具体的に説明すると、参加者は次々に流れる短い音声クリップを聴き、以前に聴いたことのある声を認識したらキーボードのキーを押す、というシンプルなタスクです。
その結果、驚くべきことに、誰が聞いても「覚えやすい声」と「忘れやすい声」が一貫して存在することが分かりました。
個々人の過去の経験や集中力の状態にかかわらず、覚える声・忘れる声には大きな一貫性があったのです。

チームは各声クリップについて、ピッチ(基本周波数)、音量、テンポ、母音の発音パターンといった音響的特徴、さらには方言やパーソナリティ特性(別途実験で主観評価されたもの)を数十項目にわたり測定しました。
これらの特徴を統合したコンピューターモデルを作成したところ、モデルは声の記憶に残りやすさをかなりの精度で予測できることが明らかになりました。
特に、声のピッチが高く、音量が大きい声は記憶に残りやすい傾向があることが示されています。
反対に、声の高さが低かったり、音量が小さかったり、テンポが遅く、発音がはっきりしていないなどの特徴を持つ声は、忘れられやすかったようです。
この結果は、視覚刺激だけでなく、聴覚刺激にも”本質的な記憶に残りやすさ”が存在するという新たな理解をもたらしました。
単なる個人差や感情、話の内容の問題ではなく、声そのものに普遍的な特徴があったのです。
今回の研究成果は、バーチャルアシスタント、ポッドキャスト、オーディオブックなどをより印象深くするための設計に応用できる可能性があります。
さらに将来的には、記憶障害を持つ人々を支援するために、特別に設計された音声コンテンツやナビゲーション支援が開発されるかもしれません。
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参考文献
Study shows that some voices are more memorable than others, irrespective of who is listening to them
https://medicalxpress.com/news/2025-03-voices-irrespective.html