4月上旬、トランプ米大統領が世界各国・地域に新たな関税策の導入を発表し、世界中が驚きと混乱に陥った。その後、何度も関税対象国や品目、税率などを変更し、混迷は深まっている。
こうした中、「自由貿易(あるいは自由貿易体制)のルールが崩れた」などの表現をよく目にする。この「自由貿易」とはいったいどういう意味なのだろう?
通常、国境を越えたモノの輸入・輸出には一定の関税がかかる。自由貿易とは貿易に制限や統制を加えず自由に取引させることを意味するが、「自由貿易体制」とはどういうものか。
改めて、整理してみた。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより
「自由貿易体制」とは
本来、自由貿易とは「国境を越える財やサービスの取引が、政府の介入(関税、輸入制限、補助金など)なしに行われる状態」を指す。各国が市場原理に任せて貿易を行うことで、資源が効率的に配分され、全体として豊かになるという考えに基づく。18世紀から19世紀にかけ、産業革命を経た英国で特に主張された。
しかし、実際にはどの国もある程度の関税や規制を持つ。それでも「自由貿易体制」と呼ばれるのは、一定のルールのもとで、過度な保護主義を抑制し、できるだけ障壁を取り除いていこうという国際的な合意と枠組みがあるからだ。
国際的枠組み
現在の国際枠組みとしては、たとえば:
WTO(世界貿易機関):加盟国は互いに差別的な関税や輸入制限を避けるよう定められている。
FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定):国同士が関税の撤廃や貿易ルールを緩和する合意を結ぶ。
トランプ政権と自由貿易
トランプ政権は「米国第一主義」に基づき、自国産業保護を目的とした関税引き上げや、特定国への制裁的な貿易措置を頻発した。これに対して、「自由貿易体制の原則に反する」あるいは「国際ルールを軽視している」といった批判が出た。
各国に関税はあるが、国際ルールに基づき緩和・透明性を高める努力をしている体制が「自由貿易体制」といえる。「自由貿易=完全無関税」ではなく、ルールに基づいた自由を指す。