
ミレイ大統領インスタグラムより
貧困率が急減、ミレイ政権下で「奇跡」の兆し
2023年12月にハビエル・ミレイ氏が大統領に就任して以降、アルゼンチンで新たな「奇跡」が起きつつある。長年にわたり同国を苦しめてきた慢性的な課題のひとつ、貧困層の多さが急速に減少しているのだ。この現象は、長らく続いていた激しいインフレの沈静化と密接に関係している。
たとえば、クリスチーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル氏(以下、クリスチーナ)が副大統領を務め、アルベルト・フェルナンデス氏(以下、アルベルト)が大統領であった2019年から2023年の間、貧困層の割合は人口の52.9%に達していた。これは約2,500万人が貧困状態にあったことを意味し、国民の半数が貧困というのは、まさに悲惨な状況と言える。こうした状態で健全な経済運営が可能なはずもない。
それにもかかわらず、当時の政権は「我々は貧困層を支援するために働いている」と繰り返し主張していた。実際に彼らが行っていたのは、生活費に対する補助金の支給であり、電気・水道・教育・交通費などに公的資金を投じていた。しかし問題は、その財源である。必要な資金は新たに紙幣を発行することで賄われており、その一部は汚職によって消えていたとされる。
財政の均衡を無視し、紙幣を必要なだけ刷るという行為は、インフレの典型的な原因とされており、まさに経済教科書にある通りの過ちをアルゼンチンは繰り返してきた。
天文学的紙幣発行とインフレ率800%超の現実
クリスチーナ氏とアルベルト氏による政権下での累積インフレ率は、実に814%に達した。たとえば、2020年度には15億2,300万枚の紙幣が発行され、それを1枚ずつ並べると地球を6周できるほどの量に相当した(2021年5月14日付「インフォバエ」から引用)。

地球を6周するだけの紙幣が印刷されていた。
このような紙幣発行による経済政策は、GDPの20%超に相当する金額を補助金などに充てていたことを意味し、すなわちインフレを助長する手段を平然と取り続けていたことになる。当然、物価は上昇し続け、賃金は追いつかず、貧困層の拡大は避けられない結果となった。