ちなみに、独週刊誌シュピーゲルによると、独連邦情報局(BND)は昨年秋、CIAに2020年にWIVなどから密かに入手した機密資料・情報を提供している。公的なデータの分析に加え、「サーレマー」というコードネームで行われた情報機関の極秘作戦で入手した資料も含まれる。資料の中には、中国の研究機関、特にウイルス研究の最先端機関のWIVからの科学データや、自然界のウイルスを人為的に改変する「機能獲得(Gain-of-Function)」実験のリスクに関する証拠や、研究所の安全基準違反を示す多数の資料も含まれていたという。
ホワイトハウスのサイトでは「メディア、政治家、保健当局、そして米国の著名な免疫学者ファウチ氏がウイルスの自然起源説を広めているが、ウイルスが中国の大都市武漢の研究所から発生したという証拠は数多くある」と主張している。
米国ではこれまでFBI、米エネルギー省、そして今回、CIAとホワイトハウスがWIV説を支持したことになる。例えば、米上院厚生教育労働年金委員会(HELP)の少数派監視スタッフの共和党議員らが15カ月間にわたり調査、研究して作成した「COVID-19パンデミックの起源の分析、中間報告」が2022年10月下旬、公表され、関心を呼んだことがある。結論として、「公開されている情報の分析に基づいて、COVID-19のパンデミックは、研究関連で生じた事件(事故)の結果である可能性が高い」と指摘、「WIV流出説」を支持している。その後、米エネルギー省は2023年2月、中国武漢発「新型コロナウイルス」の発生起源がWIVからの流出との結論に至ったという。
バイデン政権時代は自然発生説が依然、支配的だった。最高の研究機関と人材を誇る米国がウイルス起源問題で今だ結論に至らないのは、中国側の情報隠蔽だけではなく、米国内の親中人脈、政治家、専門家、研究者、ロビイストがブレーキをかけてきたからだ。 ドイツの著名なウイルス学者クリスティアン・ドロステン教授(シャリテ・ベルリン医科大学ウイルス研究所所長)は南ドイツ新聞(SZ)とのインタビュー(2022年2月9日)で、武漢ウイルスの解明を阻止しているのは中国側の隠蔽姿勢にあると明確に指摘したうえで、「実験を知っていた米国の科学者たちの責任」にも言及している。