今日のワニは、湖や川、湿地といった環境で獲物を待ち伏せして捕らえる「半水生のジェネラリスト(食性が広く、さまざまな餌を食べる動物)」として知られています。

彼らにはほとんど好き嫌いがなく、オタマジャクシ、昆虫、甲殻類、小魚などの小さな獲物から、小鹿や牛、仲間のワニ(そして時には人)に至るまで何でも口にします。

研究チームは「この食性の広さにワニの祖先が大量絶滅を生き延びた秘密がある」と考え、調査を行いました。

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白亜紀末のワニの祖先の化石/ Credit: Jack Rodgers/Natural History Museum of Utah

今回の研究では、ワニ形上目の化石99種と現生ワニ類20種の頭蓋骨と歯の形態を詳細に分析。

また比較対象として、哺乳類89種とトカゲ47種のデータも活用し、食性と生態の多様性を総合的に検討しました。

特に注目したのは、歯と頭蓋骨の形状です。

ワニに見られる鋭いナイフのような歯は肉食性を示すと同時に、すり鉢状の歯は植物をもすり潰して食べられることを示していました。

さらに頭蓋骨の形は口の動きに影響し、その動物がどのような食べ方をしていたかを知る手がかりとなります。

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ワニの祖先の復元図/ Credit: Jorge Gonzalez

そして調査の結果、古代のワニ形上目は小型から中型の肉食動物で、生態系の中では恐竜ほど支配的な地位を占めているわけではありませんでした。

ところがワニの祖先には極めて柔軟な食性を持つグループが存在し、肉、魚、昆虫、さらには植物まで幅広く何でも食べていたことが判明したのです。

この極端な雑食性は、恐竜を含む他の古生物にはほぼ見られない特徴でした。

研究者らは「この食性の柔軟さが、約2億年前の三畳紀末大量絶滅と、約6600万年前の白亜紀末大量絶滅を生き延びる鍵となったのでしょう」と結論しています。

いざとなったら何でも食べられる能力、これこそが大量絶滅のような危機を乗り越えられる強さなのかもしれません。