中国にとって現在のスペインは、EU内で最も関心のある国の一つとなっている。かつてはイタリアが一帯一路構想の主要な協力国であったが、政権交代によりメローニ首相が同構想から離脱。中国は代替国としてスペインを選び、戦略拠点としてカナリア諸島の活用も視野に入れている。
対米関係の冷却と媚中路線従来、スペイン外交は米国寄りであったが、ブッシュ政権下でサパテロ元首相がイラクから撤退したことを契機に、米国はスペインを冷遇。そのサパテロ氏が現在もサンチェス首相の政治顧問を務めていることもあり、関係はさらに冷え込んでいる。その結果、サンチェス政権は明確に中国寄りの姿勢を強めており、EUが中国製EV車に高関税を課そうとする中でも唯一反対の立場を取っている。
こうした行動はEU内でも孤立を招いており、サンチェス氏の今回の訪中にも各国首脳は冷ややかな視線を向けている。にもかかわらず、サンチェス首相は訪中中、自らがEU内で影響力を持つ存在であるかのような振る舞いを見せていた。
トランプ政権からの批判と国内の反応トランプ政権のベッセント財務長官は、今回の訪中を「自らの首を絞める行為」と強く批判した。感情的な対応で知られるトランプ大統領は、今後スペインに対して報復措置を講じる可能性があるとの懸念が国内でも広がっている。次期政権を担うことが有力視される国民党も、今回の訪問は「最悪のタイミングだった」と厳しく批判している。
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サンチェス首相が政権の座にとどまる限り、スペインの外交は迷走を続けることになるだろう。