ヴァイマー氏は2025年のメルツ氏の出現を1950年代のアデナウアー時代の再現のように受け取っている。「70年後、同じパターンが繰り返される。CDU党首で首相に指名されるフリードリヒ・メルツ氏は、巨額の負債もドイツ史上最大の再軍備も、一世代で最大の貿易戦争も望んでいなかった。しかし、ロシア、ウクライナ、米国での出来事は、彼に修正を強いるだけでなく、大きな方向転換を迫っている。アデナウアーと同様、メルツ氏もこのことに対する批判の嵐に耐えなければならない。平和主義者と右派ポピュリストは彼を戦争屋と攻撃し、左派は彼を嘘つきで約束を破る者と呼び、『ドイツのための選択肢』(AfD)は彼を裏切り者で『社会民主党』(SPD)のしもべと非難する」という。

シンプルに表現するなら、アデナウアーもメルツ氏も選挙前の公約を全て放棄したけではなく、公約とは全く逆の政策を実施する。明らかに「公約破り」だが、それが時代の要請に合致するという幸運に恵まれ、アデナウアー氏はドイツの戦後の歴史にその名を残すことが出来た。同じように、メルツ氏も膨大な財政赤字を甘受し、ドイツの再建に乗り出そうとしているわけだ。

ヴァイマー氏はコラムの最後に、「メルツ党首もSPDのクリングバイル党首も、アデナウアーの時代と同様、将来のドイツのためには改正という苦い重荷を背負わなければならないので、それを引き受けている。クリングバイル氏は移民・国民所得政策を見直し、メルツ氏は債務ブレーキを見直している。メルツ氏は、アデナウアー氏が再軍備に反対したのと同じように、巨額の債務増加に反対してきた。しかしメルツ氏はアデナウアー氏と同様、ドイツには今や安全保障のための新たな枠組み、いわばヨーロッパ版NATOが必要だという認識に基づいて行動している。ドイツはロシアに対抗するために武装し、同時に米国から独立しなければならない。この国は第2のアデナウアー時代を迎えている」と説明している。