トルコの政府債務はGDPの約30%で、日本の255%よりはるかに小さい。問題は政府債務の大きさ自体ではなく、日本のように債務が大きくても政府が信用されていれば、金利はそれほど上がらない。財政の維持可能性の必要十分条件は政府の信用なのだ。
日本の場合は黒田日銀の異次元緩和で金融抑圧がおこなわれたため、長短金利がゼロ前後だったが、植田総裁になって金融政策が正常化すると長期金利が上がり、最近では1.6%弱である。これが政府のリスクプレミアムなのだ。

日本経済新聞
ここで減税ポピュリズムが強まると、財政赤字はさらに拡大して金利が上がるだろう。これも日銀が国債を引き受ければ抑えることができるが、大量のマネーが出てインフレになる。これは財政インフレなので、日銀が抑えることは困難である。
トルコの例でもわかるように、政府の信用は一度失われると取り戻せない。政策金利を50%に上げても、インフレは止まらなかった。日本では財務省解体デモに集まるプータローが憎んでいる財務省が財政規律を守っているから、この程度ですんでいるのだ。
どこの国でも税金はきらわれ、減税は喜ばれる。政権が減税ポピュリズムに走ると、トルコのように政府の信用が毀損され、リスクプレミアム(長期金利)が上がる。それによって格付けが下がると、日本の全企業の社債の発行金利が上がる。
長期金利が上がると銀行や生保の保有する国債に多額の評価損が出る。3月末で時価評価されると、最悪の場合は金融危機が起こる。財政破綻とはデフォルトのことではなく、経済が破綻することなのだ。