そこで「空気中にどれだけH5N1が漂っているのか」を素早く測れる技術があれば、感染爆発の芽をいち早く摘むことができるかもしれません。
これまでにもPCR検査のように、遺伝子を増幅してウイルスを高感度で検出する方法は存在しました。
しかし、PCRには時間と手間、そして専門設備が必要です。
近年では、30分ほどで結果を得られる簡易PCR装置も一部で開発されていますが、依然として従来型は大がかりな機器と作業工程を要します。
現場で何十、何百というサンプルを素早く調べることは、大がかりな出張ラボや熟練技術者のサポートなしには難しい状況でした。
一方で抗体を利用した「イムノアッセイ」などの検査方法も開発されていますが、比較的早いとはいえ最短でも数十分以上かかったり、ターゲットとなる病原体に合わせて反応試薬を用意する必要があったりするのが現状です。
そこで今回研究者たちは、もっと簡単かつ短時間で、空気中のウイルスを直接検出できる方法を開発することにしました。
5分で空気中の鳥インフルエンザの存在を判定する仕組み

新たに開発されたセンサーは大きく分けて「空気からウイルスを集める工程」と「ウイルスを検知するセンサーの工程」の二段構えになっています。
まず、空気中にあるごく微量のウイルスを液体内へ取り込みます。
ただ空気中のウイルスは非常に小さいため、そのままセンサーに吹きかけても正確に検出するのは難しいところです。
そこで研究チームは、ウェットサイクロン式サンプラーという装置を用いました。
これは、外部から空気を勢いよく吸い込み、内部で渦を巻く液体と空気を接触させることで、空気中のウイルスを液体へ巻き込み、最後にその液体を回収するという仕組みです。