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「祝福の水」がもたらした病
エチオピアの聖地を訪れたヨーロッパの旅行者が、神聖なはずの水から思わぬ感染症を持ち帰る事件が起きた。ドイツとイギリスで計7人がコレラに感染し、うち2人は集中治療を受ける事態となった。
感染源とみられるのはエチオピアのクアラ地区にある聖なる井戸「バーメル・ギオルギス(Bermel Giorgis)」。この地はエチオピア正教の信者にとって霊的癒やしと神の導きを求める巡礼地とされている。旅行者らはこの井戸の水を飲用あるいは顔にかけ、さらにボトルに詰めて帰国後に他者と共有したことが、集団感染の要因とされている。
欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、この井戸が存在する地域が現在コレラの流行地であり、公衆衛生対応が武装衝突の影響で困難になっていると指摘。感染の根源を断たない限り、新たな感染者が今後も出る可能性があると警告している。
想像以上に“強力”だった聖水の細菌 報告によれば、この“祝福された水”に含まれていたビブリオ・コレラ菌(Vibrio cholerae O1)は非常に高濃度だったとされる。コレラ感染には通常10万~1億個以上の菌が必要とされるが、今回の水は常温の飛行機内やヨーロッパ到着後も活性を保つほど強力な汚染レベルだったという。
さらに、この菌株は多数の抗生物質が効かない“多剤耐性”を持ち、特定の薬剤に対する抵抗性遺伝子まで保持していたことが確認された。
幸いにもコレラ治療の基本である経口補水療法が奏功し、感染者はいずれも回復。補助的な抗生物質として用いられるテトラサイクリンには、この菌株はまだ感受性を示していた。

(画像=イメージ画像 generated using QWEN CHAT,『TOCANA』より 引用)